当時、世界恐慌の影響が、この小さな田舎町のヴェルグルの町にも及んでおり、人口わずか4300人の内、500人が失業者、1000人の失業者予備軍がいたそうです。
人々は不安から通貨を使おうとしなかったので、経済は循環しませんでした。それを問題と捉えた当時の町長、ミヒャエル・ウンターグッゲンベルガーは、地域通貨を導入し、ヴェルグルの経済が循環するように、スタンプ貨幣(※)を発行しました。スタンプ貨幣とは「自由貨幣」という、価値が減る仕組みを持ったお金に該当します。
町は、道路整備などの緊急失業者対策事業を起こし、失業者に職を与え、その労働の対価として「労働証明書」というヴェルグル地域のみで利用できる地域貨幣を与え、月初めにその額面に印紙が貼られていないと、使う事ができないという仕組みになっていました。
即ち、月初め毎に、新しい印紙を貼らなければ、利用できないので、時が経過してしまうと価値を失ってしまうという事です。
人々は手元に持っていても、月初めには価値が無くなると認識しているので、誰もができるだけ早くこのスタンプ貨幣を使おうとしました。結果、「価値が減る=腐るお金」は消費を促し、経済を活性化させました。
参照:※スタンプ貨幣(別名:スタンプ・マネー)
日付貨幣ともいう。交換手段としてのみ機能させ,価値保蔵手段の属性をもたせないようにした特異な貨幣。紙幣の裏面にスタンプを押し,または印紙をはり,あらかじめ日付を明示し,日時の経過につれあるいは取引のつど減価する仕組になっている。ゲゼルの自由貨幣の構想に始まり,1930年代にドイツ,米国等の小都市で実験。