DeFi(分散型金融)とは何か?

分散型金融(DeFi:Decentralized Finance platforms)は、DeFiサービスを提供するプラットフォームと製品の急増によって、ここ数カ月の間に大きな盛り上りを見せています。 分散型貸付プラットフォームのMakerDAOが、ステーブルコインDaiを採用したことで脚光を浴びていますが、これも、とどまるところを知らない金融の推進力となっている成長中のエコシステム全体から見れば、ほんの一部の事象にすぎません。

貸付プロトコル、セキュリティトークン、デリバティブ(金融派生商品)や取引所などを含むEthereum(イーサリアム)のDeFi環境は、ネットワークの規模拡大という大きな課題に取り組みつつ、現在最も奥の深いアプリケーション環境のひとつとして機能しています。

DeFiの分野では非常に多くのイノベーションが現在進行形で進んでいるため、全体を理解しようとすると、とても複雑になってしまうおそれがあります。ここでは、この成熟途上のエコシステムの重要な要素のいくつかに絞ってご紹介します。

DeFiとは何か

本質的にDeFiは、Ethereumというブロックチェーン上に構築された従来型の金融ツールの数々に過ぎません。これらのツールは、デジタル資産の作成および発行を目的としており、検閲耐性や金融サービスへのアクセスの向上などの公共のブロックチェーンの大きな利点を提供できるように、主にオープンソースプロトコルまたはモジュール式のフレームワークを前提としています。

全てを分散化するのは賢いやり方ではありません。これを念頭に置いて、BlockFiのような多くのDeFiアプリケーションが、デジタル資産と伝統的な金融サービスの両方をハイブリッドで提供することで、将来へのステップをより堅実にしています。統合デジタルアセット、ブロックチェーン、そしてオープンプロトコルのエコシステムを、従来の金融構造に組み込んだオープンファイナンスという用語が、現在の金融商品のフォーカスをより良く反映しています。

Ethereumのアプリケーションを語るストーリーは驚くほど変化していますが、これは、製品が提供するオープンの金融ツールに集まるうなぎ上りの人気と合致しています。一例として、Bloqboardがまとめたオープンの貸付プロトコルの報告書によれば、MakerDAO、Dharma、dYdX、およびCompound Financeの4つのオープン貸付プロトコルの有効な貸付残高が2018年に1,200%増加し、7,200万ドルに達しました。

では、Ethereumの主なオープンの金融セクターにはどのようなものがあるでしょうか。有名なところで、下記のを項目別に読み解いてまいりましょう。

  • オープン貸付プロトコル
  • 発行プラットフォーム
  • 分散予測市場
  • 取引所とオープンマーケットプレイス
  • ステーブルコイン

オープン貸付プロトコル

オープン貸付プロトコルはおそらく、Ethereumのオープンファイナンスの中で、最近もっとも注目を集めているものです。DaiやDharmaなどのP2Pプロトコルや、流動性プール設計のCompound Financeなどの利用が急増していることが主な理由となって、分散型貸付が大きな話題となっています。

オープンで分散型の貸付は、以下のような点において、従来のクレジット構造よりも数多くの利点を提供します。

  • デジタル資産貸付/借入との統合
  • デジタル資産の担保化
  • 即時取引決済および新規の担保付き貸し付けの方法
  • 信用調査を行わないため、従来型のサービスは受けられない人々へも広くアクセスが可能
  • 標準化と相互運用性—自動化によるコスト削減も可能

MakerDAOやDharmaのようなオープンプロトコルを使用した担保付き融資は、[su_highlight background=”#f3ff99″]Ethereumが仲介を必要とせずにカウンターパーティリスクを軽減できる信頼の最小化に依存するように設計[/su_highlight]されています。これは、公衆ブロックチェーンで一般的に使われる、基本的な暗号の検証メソッドによって実現されています。

オープンプロトコルの貸付は、Ethereumのような公共のブロックチェーンのみに完全に制限されています。これが世界中の金融に広がれば、とても興味深い長期的な影響があるでしょう。 MakerDAOは最も良く知られた分散型貸付プロトコルで、2019年に人気が急上昇したため、スケーリングの問題により、ドルとDai間のペグ安定化手数料の値上げが複数回提案されました。

デジタル資産を活用するその他の貸付サービスには、一般に良く知られた信用モデルや、表面には出ずにローン要求を処理する会社などを使いながら、ユーザーがデジタル資産の貸借をできるようにしたBlockFiなどがあります。

発行プラットフォームと投資

発行プラットフォームは、発行媒体を兼ねるいくつかの取引所(tZERO)を含む、広範囲のプラットフォームにわたっています。 発行プラットフォームの大部分は、暗号の分野において保留中の規制と、より柔軟な証券の可能性と成功例が急速に広まりつつあるセキュリティトークン市場に集中しています。

PolymathHarborなどの有名なセキュリティトークン発行プラットフォームでは、発行者がブロックチェーンでトークン化された証券を発行するためのフレームワークやツール、およびリソースを提供します。彼らは、自動化されたコンプライアンスや、カスタマイズ可能な取引パラメータなどによって、規制要件を満たすことを可能にする、独自の標準化されたトークン(ST-20およびR-Token)の契約書を提供しています。またこれらは、発行者側のプロセスを支援する目的で、ブローカーディーラー、カストディアン、法人などのサービスプロバイダーと統合されています。

二重取引/発行プラットフォームには、最近稼働を始めたOverstockのtZEROなどがあります。

IPFS上に構築されたフロントエンドのデジタル資産管理インタフェースと、Ethereumのスマートコントラクト上で動作するバックエンドを提供する Melonportなどの資産管理プラットフォームも注目を集めています。Melonportは、価格フィード、リスク管理、コンプライアンス、取引所などを統合しています。

発行プラットフォームと投資管理フレームワークは、より多くの参加者、特に投資機関がオープンファイナンスに参入するにつれて、急速に普及するでしょう。

分散予測市場

分散予測市場は、[su_highlight background=”#f3ff99″]非常に複雑でありながら非常に大きな可能性を秘めているオープンファイナンスの最も魅力的な要素の1つです。[/su_highlight] Augurは、Ethereumをベースにした検閲抵抗予測市場として、去年、鳴り物入りのサービスを開始しました。Gnosis(グノシス)

など他のプラットフォームもそれに追随する構えです。

予測市場は長い間、リスクをヘッジしたり、世界の出来事を推測したりするための一般的な金融ツールであり、分散型予測市場でも同様のことが可能です。ただし、この市場が扱うのは仮想通貨(暗号資産)であり、市場の検閲は不可能です。検閲がないということは、どうしても「デッドプール」(訳注:マーベル・コミックの登場人物、暗殺者)による暗殺の心配を招きますが、多くの人は、これを検閲を行わないことに付随する担保リスクとみなしています。

Augur(オーガ)は、政治や天気の予報から、金銭的または現実的な有害事象のリスクのヘッジまで、あらゆる用途での使用が可能だとしています。

Augurは、分散型予測市場を利用するための参入障壁が高いことが主な理由となり、サービス開始以来、ボリュームの獲得に苦労してきました。しかし、ガバナンスやマイクロインシュアランス商品のような機能を提供することを計画しているAugurやGnosisのような市場は、暗号通貨がより多くの人目に触れ、主流のユーザーが最大限の可能性を実感し始めるにつれてより人気が出ることでしょう。

取引所とオープンマーケットプレイス

オープンファイナンスの取引所は、主に分散型交換(DEX)プロトコルとP2P市場とに関わっています。[su_highlight background=”#f3ff99″]まずDEXは、Ethereum上の2つの当事者によるP2Pの資産交換で、Coinbase などの中央集権型交換などの取引では、第三者が仲介者として機能することはありません。[/su_highlight] DEXは、その不明瞭な性質と使い勝手の悪いUIのためにボリューム不足に悩まされており、まだ導入の初期段階にあります。

DEXはまた、最小の決済時間またはリスクで、ある資産を別の資産と交換するアトミックスワップなどの非カストディアルの手段など、トークンを交換するための非常に革新的な方法を使用しています。 Ethereumで一貫して最も人気のあるのは、IDEX、つまり分散型の取引所です。EtherDeltaを含む他の取引所は、SECが先導する不利な規制の進展にもかかわらず、以前はニュース報道の主流でした。

[su_highlight background=”#f3ff99″]多くの「DEX」は、真に分権化されている、あるいは非カストディアル的である、という疑わしい主張をしているので、ご利用になる前によくご自身で研究されるのが賢明でしょう。[/su_highlight]

Blockonomiでこれまでに扱ったDEXには、以下のようなものがあります。

  • Binance DEX
  • Radar Relay
  • EtherDelta

他の種類の公開市場では、しばしば暗号収集品と呼ばれる非代替トークン(NFT)の交換が強調されています。 OpenSeaやRarebitsのようなプラットフォームは、CryptokittiesのようなゲームのNFT(Non-Fungible Token)から、EthereumベースのゲームDecentralandの仮想土地区画にわたる仮想通貨の調査、発見、売買を容易にします。

Non-Fungible Token(NFT)とは、ERC721規格により発行した非代替性トークンのことを指します。ERCは、Ethereum Request for Commentsの略称であり、イーサリアムの技術提案のことです。

引用元:Non-Fungible Token(NFT)とは・意味

District0Xのようなマーケットプレイスでは、ユーザーが独自のマーケットプレイスを作成し、ガバナンス手順に投票することさえ可能にしました。 District0xMemeFactoryは近日中に発売が期待されています。

EthereumのP2Pマーケットプレイスには実質的な長期の可能性があり、最終的に、ネイティブのデジタル資産と、分断された絵画を並べて表示したかのようにトークン化された現実世界の資産の市場に拡大する可能性があります。

ステーブルコイン

ここ最近のステーブルコインは、トークン発行や準備金の監査、および価格ペグ管理のための新しいモデルとして、仮想通貨市場に流入してきました。 各ステーブルコインは、主に米ドルにペグしており、時には金や他の外部資産との安定したペグを維持するように設計された、ブロックチェーン発行のトークンです。

ステーブルコインは、主に3つのカテゴリに分類されます

  • 暗号担保付き
  • フィアット担保付き
  • 無担保

暗号担保付きステーブルコイン

暗号担保付きステーブルコインには、現在の担保比率に基づいて、原資産(ETHなど)が貸付資産(Dai)に対して過剰担保されたMakerのDaiが含まれます。

例えば、この比率が150パーセントの場合、MakerのCDPに150ドル相当のETHを入金すると、100Daiが返却されます。これは興味深いことに、[su_highlight background=”#f3ff99″]プロトコルは貸し手であり、CDPとガバナンスのパラメータに基づいてDaiトークンの作成/バーンをする[/su_highlight]ので、Makerは借り手だけによって構成されています。Daiは検閲耐性があり、分散レバレッジを提供できる点で、通常とは異なっています。

フィアット担保付きステーブルコイン

フィアット担保付きステーブルコインは、これまでで他を引き離す大きな人気があり、[su_highlight background=”#f3ff99″]Tether、USDC、およびGemini Dollarsのような、規制に準拠した監査済みのコイン[/su_highlight]が含まれます。これらのステーブルコインのモデルの間にはほとんど違いがなく、

米ドルの準備金によって、価格のペグの維持が可能なトークンの現在の循環供給を裏付けることができる、という透明な監査を提供することで、ユーザーを信頼・依存しています。

フィアット担保付きのステーブルコインは、サイファーパンクの観点からはほとんど意味をなしません。なぜなら、これはブロックチェーンベースの公開暗号化の利点を排除し、リスクを増やしているからです。これらのステーブルコインの背後にある会社は、彼らが銀行口座に保管している、ユーザーから預金された資金(米ドル建て)の利子で収入を得ます。フィアット担保付きのステーブルコインは、米ドルのペグと1:1の比率で償還可能であると考えられています。

しかし、市場での競争によって、ステーブルコイン市場の次の競争トレンドが金利になる可能性があり、そうなった場合はステーブルコイン供給者の利益が実質的に減少するため、消費者に利益をもたらす可能性がある、という興味深い分析もあります。

無担保ステーブルコイン

無担保ステーブルコインは、中央集権型でも、仮想通貨による過剰担保でもなく、安定したペグを維持するためのアルゴリズムに基づく供給の縮小や拡大に依存しています。ステーブルコインの代表的な例であったBasisは、そのモデルに対する規制上の懸念を受け、昨年末にプロジェクトを閉鎖しました。

まとめ

DeFiとオープンファイナンスのエコシステムには、カストディアン、インフラストラクチャプラットフォーム、保険、支払い手段など、さらに多くの種類の参加者、サービス、および製品があります。ご自身による調査の上、DeFi製品が、不確実で前例のないプラットフォームの中に高リスクの資産を含む場合がよくあることを常に理解することが大切です。

しかし、これらは同時に、オープンでアクセス可能な環境においてデジタル資産、ブロックチェーン、および従来の金融システムが相互運用する、説得力のある将来を垣間見ることも可能にしてくれます。

翻訳元:What is DeFi? Understanding The Decentralized Finance Landscape

代表理事 山下健一

仮想通貨の本質を学ぶことが出来る、暗号通貨技能検定(初級編)とは!?
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投稿者プロフィール

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山下健一代表理事
暗号通貨の思想とブロックチェーンの概念は、金融システムをより安全に低コストで運用できるだけでなく、銀行口座を持たない20億人の生活環境を底上げします。また、寄附や募金へ広く活用されることは、SDGsの達成にも貢献する事でしょう。一人でも多くの方と共に、正しい暗号通貨システムの可能性を学び、実生活や仕事にも取り入れて頂けるよう、当協会はこれからも「暗号通貨技能検定講座」の開催を重ねて参ります。

【資格・受賞歴】
・日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー
・東久邇宮記念賞受賞
・東久邇宮文化褒賞受賞
・特許:特開2016-081134号
・特願:2018-028585