近年、暗号通貨に関するニュースは数多く報じられており、価格の上昇や下落、新しいトークンの登場、あるいは規制に関する議論など、その話題の多くは「投資対象としての暗号通貨」に焦点が当てられてきました。
しかし、世界の金融システムを俯瞰して見ると、より重要な変化が静かに進み始めています。それは、暗号通貨やブロックチェーンという技術が、既存の金融インフラとどのように接続されていくのかという問題です。
その象徴的な出来事の一つが、世界的な決済ネットワークを運営する Mastercard が、暗号通貨関連企業との連携を拡大する取り組みを発表したことです。
このニュースは一見すると、単なる企業の新しいサービスやパートナーシップの発表のようにも見えます。しかし、その背景を丁寧に読み解いていくと、金融インフラそのものが変化し始めている可能性が見えてきます。
本稿では、Mastercard の発表を入り口として、カード会社のサービスがどのように進化しようとしているのか、暗号通貨取引所やブロックチェーン企業はどのような役割を担うのか、そして日本の暗号通貨市場が直面している課題について整理していきます。
さらに最後には、こうした金融インフラの変化の中で、なぜビットコインという存在が依然として特別な意味を持つのかについても考察していきます。
暗号通貨は単なる投資対象ではありません。それは、金融の仕組みそのものを問い直す技術でもあります。
本稿が、現在起きている変化を俯瞰し、これからの金融の姿を考える一つのきっかけとなれば幸いです。
この記事で得られる3つの視点
- カード会社の参入が示す「金融インフラ再設計」という視点
- 取引所・銀行・ブロックチェーン企業が形成する新しい金融エコシステム
- 中央集権型金融とビットコインという分散型ネットワークの本質的な違い
ビットコインを円建てで理解してきた方ほど、本記事を通じて、これまで当然だと思っていた前提に違和感を覚える可能性があります。
この記事をオススメする方
- カード会社や銀行が暗号通貨に近づく意味を深く理解したい方
- 暗号通貨を価格ではなく、金融インフラの変化として捉えたい方
- BybitやRippleなどの企業が何を担おうとしているのか知りたい方
- 日本の規制が今後の暗号通貨市場に与える影響を考えたい方
- ビットコインを他の暗号通貨と同じ枠で見ることに違和感がある方
上記のいずれかに当てはまる方であれば、本記事は、既存金融の在り方を見る視点そのものを見直すきっかけになるかもしれません。
それでは、本文へとお進みください。
目次
第一章:Mastercardが動いた日 ― 暗号通貨が金融インフラに組み込まれる瞬間
世界の金融システムは、長い間ある一つの構造の上に成り立ってきました。それは「銀行を中心とした決済ネットワーク」です。
私たちが日常で使うクレジットカードやデビットカードの決済は、そのほとんどが巨大な決済ネットワークを通じて処理されています。
その代表的な存在が、世界中の加盟店と金融機関をつなぐ決済ネットワークである Visa や Mastercard、日本なら JCB であり、これらクレジットカード決済の仕組みは、一見するとシンプルです。
ユーザーがカードを使うと、加盟店、カード会社、銀行、決済ネットワークなど複数の主体を経由して取引が処理され、その取引の過程で各プレイヤーが手数料を受け取る仕組みになっています。
言い換えれば、カード会社は「お金そのもの」を発行しているのではなく、「お金が移動するレール」を提供することでビジネスを成立させているのです。
この構造は数十年にわたり世界の決済インフラとして機能しおり、国際送金、EC決済、店舗決済など、あらゆる支払いがこのネットワークの上で動いています。
しかし、2009年に登場した Bitcoin は、この構造に対して全く異なるアプローチを提示しました。
ビットコインは、銀行や決済ネットワークを介さずに価値を移転できる仕組みを私たちに提供してくれました。
中でも、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術を利用することで、中央管理者を必要とせずに取引を成立させることができる仕組みは革命的だり、この仕組みは従来の金融システムに対して大きな問いを投げかけました。
もし人々が銀行やカード会社を通さずに価値を移動できるとしたら、これまでの金融インフラはどのように変わるのでしょうか。
当初、多くの金融機関は暗号通貨を懐疑的に見ていましたが、価格変動の大きさや規制の未整備などを理由に、金融システムの中心に取り込むことは難しいと考えられていたのです。
しかしその後、状況は徐々に変わり始めます。
ブロックチェーン技術の有用性が認識されるにつれ、金融機関や決済企業はこの新しい技術を無視できなくなっていきたのです。
そして現在、私たちは新しい段階に入ろうとしています。
暗号通貨は既存金融と対立する存在から、金融インフラの中に組み込まれる存在へと変化しつつあるのです。
その象徴的な動きの一つが、今回の「Mastercard が暗号通貨企業とのパートナーシップを拡大する取り組みを発表した」ことです。
今回の発表は、単なる新サービスの追加ではなく、むしろ重要なのは、決済ネットワークそのものが暗号通貨エコシステムと接続されようとしている点です。
これまで、別々の領域で発展してきた「既存金融」と「暗号通貨」が、同じインフラの上で動く可能性が生まれてきているわけです。
もしこの流れが進めば、将来の決済システムは現在とは大きく異なる姿になるかもしれません。
ユーザーが意識することなく、決済の裏側ではブロックチェーンやステーブルコインが利用されるようになる可能性もあるということです。
つまり、表面上はこれまでと同じカード決済であっても、その裏側のインフラが大きく変化していく可能性があるということ。
しかし、ここで一つ重要な視点があります。
それは、カード会社が構築しようとしている金融ネットワークは、基本的には中央集権型の仕組みであるという点です。
企業が管理するネットワークの中で暗号通貨やステーブルコインが利用される形になる可能性が高いでしょう。
この点は、誰も支配できない分散型ネットワークとして設計されたビットコインとは、思想的に大きく異なる部分でもあります。
つまり、現在進んでいる変化は「暗号通貨が既存金融に取り込まれている側面」と、「分散型金融の理念がどこまで実現されるのか」という二つの視点から見る必要がある。
Mastercard の今回の発表は、そのような金融の構造変化の入り口にある出来事と言えるでしょう。
暗号通貨が金融インフラに組み込まれる世界がどのような姿になるのか。そしてその中で、取引所やブロックチェーン企業はどのような役割を担うことになるのでしょうか。
次章では、カード会社のサービスがどのように進化しようとしているのか、そしてステーブルコインやブロックチェーン技術が世界の決済システムをどのように変えようとしているのかについて見ていきます。
第二章:カード決済はどう進化するのか ― ステーブルコインが書き換える世界の決済
第一章では、世界的な決済ネットワークを運営する Mastercard が暗号通貨企業との連携を進めている背景には、金融インフラそのものの変化がある可能性について触れました。
では、この動きは具体的にカード決済の仕組みをどのように変えていくのでしょうか。見ていきましょう。
まず、従来のカード決済は、複数の金融機関と決済ネットワークが連携することで成立しています。
ユーザーが店舗やオンラインショップでカードを利用すると、その取引は加盟店、アクワイアラ(加盟店契約会社)、カード発行会社、決済ネットワークなどを経由して処理されます。
最終的には銀行間で資金の清算が行われ、取引が完了します。
この仕組みは長年にわたり世界の決済を支えてきましたが、いくつかの課題も抱えているのです。
例えば、国際送金には時間とコストがかかること、銀行の営業時間や各国の決済インフラに依存すること、さらに複数の中間事業者が関与することで手数料が発生します。
こうした課題を解決する可能性を持つ技術として注目されているのが、ブロックチェーンとステーブルコインです。
ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨の価値に連動するよう設計されたデジタル通貨であり、暗号通貨の技術を利用しながら価格の安定性を保つことを目的としています。
もしカード決済の裏側でステーブルコインが利用されるようになれば、決済の仕組みは大きく変わる可能性があります。
例えば、国境を越えた決済であっても、ブロックチェーン上で即座に資金移転が行われることで、これまで数日かかっていた清算が大幅に短縮される可能性があります。
また、銀行間の複雑な清算プロセスを簡略化できる可能性も指摘されています。
このような仕組みは、特に国際送金や企業間取引(B2B決済)において大きな影響を与える可能性があります。
現在、国際送金には複数の銀行を経由するコルレス銀行ネットワークが利用されることが多く、その過程で時間とコストがかかります。
しかし、ブロックチェーンを利用すれば、よりシンプルな構造で資金移転が可能になると考えられています。
また、EC市場の拡大に伴い、世界中の企業が国境を越えて商品やサービスを提供する機会が増えています。
このような状況では、国際決済の効率化は企業にとって重要な課題の一つであり、カード会社がブロックチェーンやステーブルコインを取り入れる背景には、こうしたグローバル経済の変化も関係していると考えられます。
ただし、ここで重要なのは、カード会社が目指しているのは完全に分散型の決済システムではないという点です。
企業が運営する決済ネットワークの中でブロックチェーン技術やステーブルコインを活用する形になる可能性が高く、あくまで既存金融の枠組みの中で新しい技術を取り入れる形になると考えられます。
つまり、ユーザーから見るとカード決済の使い方は大きく変わらず、これまでと同じようにカードを使って支払いを行い、その裏側で資金移動の仕組みが徐々に変化していくという形になるということ。
言い換えれば、決済の表側は従来のままでも、その裏側では新しい金融インフラが動き始める可能性があるのです。
では、このような変化の中で、暗号通貨取引所やブロックチェーン企業はどのような役割を担うのでしょうか。
カード会社が金融インフラを提供し、銀行が資金管理を担う従来の構造に加えて、暗号通貨エコシステムのプレイヤーが新たに参加することで、金融の仕組みはより多層的なものになりつつあります。
次章では、暗号通貨取引所やブロックチェーン企業がこの新しい金融エコシステムの中でどのような役割を果たす可能性があるのかについて考えていきます。
第三章:取引所とブロックチェーン企業の役割
第二章では、カード会社がブロックチェーンやステーブルコインを取り入れることで、決済インフラの裏側が大きく変化する可能性について触れました。
しかし、この新しい金融エコシステムはカード会社だけで成立するものではありません。
そこには暗号通貨取引所やブロックチェーン企業といった新しいプレイヤーが深く関わることになります。
まず、注目されるのが暗号通貨取引所です。
例えば、世界的な取引所の一つである Bybit のような企業は、これまで主に暗号通貨の売買プラットフォームとして認識されてきました。
しかし、金融インフラが変化していく中で、取引所の役割も徐々に変わりつつあります。
従来の金融システムでは、銀行が資金の保管や送金の役割を担ってきましたが、暗号通貨の世界ではウォレットや取引所が資産の管理や送金の拠点として機能するケースが増えています。
もし、カード会社の決済ネットワークが暗号通貨エコシステムと接続されるようになれば、取引所は単なる売買の場ではなく、「デジタル資産と既存金融をつなぐ入り口」としての役割を担う可能性があります。
例えば、ユーザーがカードを利用して暗号通貨を購入したり、暗号通貨を法定通貨に換えて決済に利用したりする場合、その裏側では取引所が流動性を提供する仕組みが必要になります。
つまり、取引所は暗号通貨と法定通貨の間を橋渡しする重要な役割を担うことになります。
次に、もう一つ重要なプレイヤーが、ブロックチェーン企業です。
その代表的な存在の一つが Ripple Labs です。Ripple は長年にわたり、ブロックチェーン技術を利用した国際送金ネットワークの構築を進めてきました。
従来の国際送金は、複数の銀行を経由するコルレス銀行ネットワークによって処理されることが多く、送金に時間とコストがかかるという課題がありました。
Ripple が提供する技術は、このような課題を解決するために設計されたものであり、ブロックチェーンを活用することで、銀行間の送金をより迅速かつ効率的に処理できる可能性があるのです。
もし、カード会社の決済ネットワークがこうしたブロックチェーン企業の技術と接続されれば、金融インフラはさらに多層的な構造になる可能性がある。
例えば、カード会社が決済ネットワークを提供し、銀行が資金管理を担い、取引所が流動性を提供、ブロックチェーン企業が技術基盤を支えるという形です。
このような構造を図式化すると、次のような役割分担が見えてきます。
カード会社:世界中の加盟店とユーザーをつなぐ決済ネットワーク
銀行:法定通貨の管理と金融規制への対応
暗号通貨取引所:デジタル資産と法定通貨の交換
ブロックチェーン企業:送金や決済を支える技術基盤
つまり、従来の金融システムに暗号通貨エコシステムが加わることで、新しい金融ネットワークが形成されつつあると言えるでしょう。
しかし、この変化はすべての国で同じスピードで進んでいるわけではありません。
金融規制や市場環境の違いによって、国ごとに暗号通貨の普及状況やサービスの展開には大きな差があるからです。
特に日本では、暗号通貨に関する規制が比較的厳格であり、海外取引所の利用について金融当局が注意喚起を行うなど、慎重な姿勢が見られます。
こうした規制は利用者保護の観点から重要な役割を果たしていますが、同時に世界の金融インフラが急速に変化する中で、日本の市場がどのような位置に置かれるのかという問題も浮かび上がってきます。
次章では、日本の暗号通貨市場と規制環境に焦点を当て、世界の金融インフラが変化する中で日本がどのような課題に直面しているのかについて考えていきましょう。
第四章:日本の暗号通貨市場はガラパゴス化するのか
ここまで見てきたように、世界の金融インフラは今、大きな転換点に差し掛かっています。
カード会社、銀行、暗号通貨取引所、ブロックチェーン企業が互いに接続され、新しい金融エコシステムが形成されようとしているからです。
しかし、この変化はすべての国で同じスピードで進んでいるわけではありません。
国ごとに金融制度や規制環境が異なるため、暗号通貨に対する取り組み方には大きな差が見られます。特に日本では、暗号通貨に関する規制が比較的厳格であることで知られています。
日本では暗号通貨交換業を営むためには、金融庁 への登録が必要です。
この制度は、利用者保護やマネーロンダリング対策などの観点から整備されたものであり、世界的にも比較的早い段階で法制度が整えられた国の一つと言えるでしょう。
一方で、日本の金融当局は、国内で登録されていない海外取引所の利用について注意喚起を行っています。
海外の暗号通貨取引所の中には、日本の規制に基づく登録を受けていないまま日本居住者向けにサービスを提供しているケースもあるため、利用者保護の観点から警告が発せられているのです。
こうした姿勢は、利用者の資産を守るという意味では重要な役割を果たしていまが、同時に、世界の暗号通貨市場が急速に拡大している中で、日本のユーザーや企業がどのような位置に置かれるのかという課題も浮かび上がってきています。
例えば、海外では新しい金融サービスやブロックチェーンプロジェクトが次々と登場しており、暗号通貨決済、ステーブルコイン、分散型金融(DeFi)、トークン化資産など、さまざまな分野でイノベーションが進んでいます。
しかし、日本の制度や規制がこうした動きに十分対応できていない場合、国内ユーザーが最新のサービスにアクセスしにくくなる可能性があります。
よって、このような状況が続くと、日本市場が独自の進化を遂げる「ガラパゴス化」のリスクが指摘されることもあります。
ガラパゴス化とは、国内の制度や市場環境が独自に発展することで、世界の標準から離れてしまう現象を指すこと。
かつて日本の携帯電話市場で起きた現象として知られていますが、暗号通貨市場でも同様の状況が生まれる可能性があり、さらにもう一つの懸念もあります。
それは、情報格差が広がることで、利用者が十分な知識を持たないまま投資判断をしてしまうリスクです。
暗号通貨市場は革新的な技術やプロジェクトが生まれる一方で、実態の伴わないトークンや詐欺的なプロジェクトが存在することも事実。
もし国内ユーザーが世界の暗号通貨エコシステムの動きを十分に理解できないまま投資を行う状況が広がれば、信頼性の低いプロジェクトに資金が流れてしまう可能性があります。
特に、特定の政治家や著名人の名前を冠したトークンなど、実体の不透明なプロジェクトに対して資金が集まるケースが報じられることが、ここ最近でも話題になりました。
こうした問題は、単に規制の問題だけではなく、教育や情報提供の重要性とも深く関わっています。
暗号通貨は技術的にも制度的にも新しい分野であるため、正しい知識を持つことが利用者自身のリスク管理にもつながるからです。
日本が今後どのような制度設計を行うのかは、暗号通貨市場の発展にとって重要な要素となるでしょう。
利用者保護を重視しながらも、イノベーションを阻害しないバランスの取れた制度を構築することが求められています。
そしてもう一つ重要な視点があります。それは、現在進んでいる金融インフラの変化の中で、ビットコインのような分散型ネットワークがどのような意味を持つのかという点です。
カード会社や金融機関が暗号通貨技術を取り入れる一方で、中央管理者を持たないネットワークとして設計されたビットコインは、依然として独自の存在感を持っています。
次章では、こうした中央集権型の金融ネットワークと分散型ネットワークの違いに注目しながら、ビットコインが持つ特別な意味について考えていきます。
第五章:それでもビットコインが特別な理由 ― 中央集権と分散型金融の未来
ここまで見てきたように、世界の金融インフラは大きな転換点に差し掛かっています。
カード会社、銀行、暗号通貨取引所、ブロックチェーン企業が接続され、従来とは異なる金融ネットワークが形成されつつあります。
その象徴的な動きの一つが、今回取り上げた、世界的決済ネットワークを運営する Mastercard が暗号通貨エコシステムとの連携を拡大していることです。
この流れは、暗号通貨技術が既存金融の中に取り込まれていく過程とも言えます。
ステーブルコインやブロックチェーン技術を利用することで、決済や送金の効率を高めることが期待されています。
もしこうした仕組みが普及すれば、国際送金や企業間決済などの分野で大きな変化が起きる可能性があるのです。
しかし、この動きの中で一つ忘れてはならない視点があります。それは、暗号通貨と呼ばれるものの中でも、その設計思想は必ずしも同じではないという点です。
例えば、カード会社や金融機関が取り入れようとしているステーブルコインは、一般的に企業や団体が管理する仕組みの上で運用されます。
つまり、発行主体や管理主体が存在し、そのルールに基づいて運用される中央集権型の仕組みです。
これは既存金融の枠組みと比較的相性が良く、企業がサービスとして提供する形になりやすいと言えます。
一方で、ビットコインは全く異なる思想のもとで設計されています。
2009年に誕生した Bitcoin は、特定の企業や政府が管理するのではなく、世界中の参加者によって維持される分散型ネットワークとして構築されている。
この仕組みの最大の特徴は、「誰も支配できないネットワーク」であるという点です。
ビットコインのルールはソフトウェアとして公開されており、世界中のノードによって検証され、中央管理者が存在しないため、特定の主体が恣意的に通貨供給を増やしたり、取引を停止したりすることはできません。
既に皆さんもお気づきですが、この特徴は既存金融の仕組みとは大きく異なり、銀行やカード会社は、企業としてサービスを提供し、そのネットワークを管理する主体が存在しています。
しかしビットコインは、ネットワークそのものが分散的に維持されており、誰か一人がコントロールできる仕組みではないのです。
現在進んでいる金融インフラの変化を俯瞰すると、二つの流れが同時に存在していることが見えてきます。
一つは、既存金融が暗号通貨技術を取り込み、より効率的な金融システムを構築しようとする流れであり、もう一つは中央管理者を持たない分散型ネットワークとしてのビットコインが独自の価値を持ち続ける流れです。
これらは必ずしも対立するものではなく、異なる役割を持つ可能性もあります。
例えば、日常的な決済や金融サービスは企業が提供する中央集権型のネットワークが担い、価値保存や国境を越えた価値移転の基盤としてビットコインが機能するという形です。
実際、インターネットの世界でも似たような構造が存在しています。
インターネットという基盤は分散型のネットワークですが、その上で動くサービスは企業が提供する中央集権型のものが多く存在しています。
同様に、将来の金融システムも分散型と中央集権型の仕組みが共存する形になる可能性がある。
Mastercard の今回の発表は、こうした金融の変化を象徴する出来事の一つと言えますし、既存金融が暗号通貨技術を取り入れることで、新しい金融インフラが形成されようとしています。し
かしその一方で、誰も支配できないネットワークとして設計されたビットコインは、依然として独自の価値を持ち続けています。
金融の未来は、単一の仕組みによって決まるものではありません。
中央集権型の金融ネットワークと分散型ネットワークがどのように共存し、どのように役割を分担していくのか。
それを考えることは、これからの金融システムを理解する上で重要な視点となるでしょう。
今回の Mastercard の動きは、その大きな変化の入り口にある出来事と言えるのかもしれません。
最後に
今回の記事では、Mastercard が暗号通貨企業との連携を拡大する動きを入り口として、世界の金融インフラがどのように変化しようとしているのかを整理してきました。
カード会社、銀行、暗号通貨取引所、そしてブロックチェーン企業。
これまでそれぞれ異なる領域で活動してきたプレイヤーが、今まさに一つの金融エコシステムの中で接続され始めています。
この流れは単なる新サービスの登場ではなく、「お金の移動の仕組みそのもの」が再設計されている可能性を示しています。
その中で重要なのは、暗号通貨という言葉で一括りにされている技術や仕組みが、必ずしも同じ思想で作られているわけではないという点です。
企業や金融機関が管理する中央集権型の金融ネットワークと、中央管理者を持たない分散型ネットワークは、本質的に異なる役割を持っています。
例えば、決済の効率化や金融サービスの拡張という観点では、企業が管理するネットワークの方が適している場面もあるでしょう。
一方で、誰も支配できない価値保存の仕組みという観点では、分散型ネットワークとして誕生した Bitcoin が独自の意味を持ち続けています。
つまり、これからの金融システムは「どちらか一方が勝つ」という単純な構図ではなく、中央集権型の金融ネットワークと分散型ネットワークがそれぞれの役割を持ちながら共存していく可能性があります。
一方で、日本の暗号通貨市場にはもう一つ重要な課題があります。
それは、世界の金融インフラが急速に進化する中で、日本の制度や市場環境がどのようにこの変化に対応していくのかということ。
利用者保護の観点から慎重な制度設計は重要ですが、同時に世界のイノベーションとの接点を失わないこともまた重要です。
もし制度や情報の更新が遅れてしまえば、日本のユーザーや企業が新しい金融エコシステムから取り残される可能性もあります。
そしてその結果、正確な情報に基づかない投資判断や、実態の伴わないプロジェクトへの資金流入といった問題が生じるリスクも考えられます。
だからこそ、これからの時代に求められるのは、暗号通貨を単なる投資対象として捉えるのではなく、「金融の仕組みそのものを理解する技術」として捉える視点ではないでしょうか。
暗号通貨やブロックチェーンは、単に新しい金融商品を生み出すだけではなく、「お金とは何か」「金融とはどのように成立しているのか」という根本的な問いを私たちに投げかけています。
今回の Mastercard の発表は、その大きな変化の一端に過ぎません。
しかし、この出来事をきっかけに、世界の金融システムがどの方向に進もうとしているのかを考えることは、これからの時代を理解する上で重要なヒントになるはずです。
金融の世界は今、静かに変わり始めています。そしてその変化をどう理解し、どう活かしていくのかは、私たち一人ひとりの視点に委ねられているのかもしれません。
本質を学び、未来に活かしましょう。
暗号通貨技能検定とは
こんな想いの方々が受講されています
- 暗号通貨やブロックチェーンについて、知識の有無にかかわらず興味関心がある。
- 同一労働・同一賃金が施行された中、資格を得て他者との収入に違いを出したい。
- 自社のビジネスにブロックチェーン技術がどの様に導入できるのかを知りたい。
- SDGsの目標達成に対し、ブロックチェーン技術がどの様に関係していくのかを知りたい。
- 暗号通貨の正しい知識をもち、どの暗号通貨に注目したらよいのか等の明確な判断力を付けたい。
- 暗号通貨の始め方や取り扱いを覚えたいが、書店に並んでいる本やYoutubeを見ても理解が進まない。
- 講師としての資格を取得し、より多くの方々へ暗号通貨の思想やブロックチェーン技術の概念を伝えたい。
投稿者プロフィール
- 山下健一代表理事
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暗号通貨の思想とブロックチェーンの概念は、金融システムをより安全に低コストで運用できるだけでなく、銀行口座を持たない20億人の生活環境を底上げします。また、寄附や募金へ広く活用されることは、SDGsの達成にも貢献する事でしょう。一人でも多くの方と共に、正しい暗号通貨システムの可能性を学び、実生活や仕事にも取り入れて頂けるよう、当協会はこれからも「暗号通貨技能検定講座」の開催を重ねて参ります。
【資格・受賞歴】
・日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー
・東久邇宮記念賞受賞
・東久邇宮文化褒賞受賞
・特許:特開2016-081134号
・特願:2018-028585
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