暗号通貨の話題は、いまも価格から始まります。上がった、下がった、いま買うべきか。テレビもSNSも、入口はほとんどそこです。もちろん、価格に関心を持つことが悪いわけではありません。値段は、誰にとっても分かりやすい入口だからです。
しかし、それだけでしょうか。
2026年7月15日、日本で一つの法律が成立しました。金融商品取引法および資金決済法の一部を改正する法律です。同じ月の7月23日に公布されました。この改正によって、暗号通貨に関する規制の大半が、資金決済法から金融商品取引法へと移されます。
報道の見出しは、そのほとんどが「規制強化」でした。インサイダー取引の規制が新しく入ったこと。罰則が引き上げられたこと。確かに、そこは大きな変更です。
けれど、当協会がこの改正でいちばん重要だと考えているのは、そこではありません。条文の中に、これまで日本の法律になかった一つの言葉が生まれたことです。「特定暗号資産」という言葉です。改正金融商品取引法の第2条第50項に置かれました。
この言葉は、暗号通貨を二つに分けます。分ける基準は、値段でも、時価総額でも、知名度でもありません。発行する権限を持つ者がいるかどうか、ただ一点です。
2014年7月に当協会を設立してから、12年が経ちました。技術系の職を経て外資系生命保険の営業に移り、そこでBitcoinに出会った私にとって、この線引きは他人事ではありません。何故なら、この一本の線こそが、Bitcoinという仕組みが最初から持っていた設計思想そのものだからです。
法律は、社会がまだ言葉にできていないものに、名前を付ける仕事をします。今回の改正で日本の条文が名前を付けたのは、「発行する者がいない通貨」という、これまで制度が扱ってこなかった存在でした。
この記事では、価格には一切触れません。扱うのは、条文が引いた線と、その線が生活のどこに顔を出すかだけです。専門用語は、出てきた場所でその都度ほどいていきます。
この記事で扱う3点
- 2026年の法改正が、暗号通貨をどのような基準で二つに分けたのか
- 「発行者がいない」という状態が、なぜ制度の設計に影響するのか
- この線引きを知ると、暗号通貨の学ぶ順番がどう変わるのか
こんな方に向けた記事です
- 暗号通貨に関心はあるものの、まだ始めていない方
- ニュースで「規制強化」と聞いて、不安になった方
- 金融・保険・証券・IT の実務で、顧客に聞かれて答えられなかった方
- 価格の話ではなく、仕組みから理解したい方
- お子さんやご家族に、暗号通貨を説明したい方
それでは、本文へとお進みください。
目次
第一章:2026年、日本の法律に新しい言葉が生まれた
まず、事実を時系列で並べます。
2025年6月13日、改正資金決済法が公布されました。施行されたのは、その約1年後の2026年6月1日です。この改正には四つの柱があります。国境をまたぐ収納代行への規制の整備。資金移動業者が破綻したときの、利用者への資金返還方法の多様化。暗号資産交換業者に対する国内資産保有命令の新設。そして、電子決済手段等・暗号資産等仲介業という新しい登録制度の創設です。
四つ目の仲介業は、自分では通貨を保有も管理もせず、媒介だけを行う事業者のための枠組みです。財務要件が課されないため、参入のハードルは下がりました。
同じ2026年6月1日、もう一つの変更も動き出しました。外国で発行されたステーブルコインのうち、日本の制度と同等性が確保された外国法令に基づく信託受益権を、資金決済法上の「電子決済手段」として位置づける内閣府令改正です。公布は2026年5月19日でした。
ここまでが、資金決済法の側の話です。
そして2026年7月15日、金融商品取引法等の改正法が成立しました。7月23日に公布されています。暗号資産の規制を金商法へ移す部分は、2027年7月までに、政令で定める日から施行されます。
この改正で、「暗号資産交換業」という呼び名は「暗号資産取引業」に変わります。名前だけの変更ではありません。金融商品取引法の枠組みに組み込まれる、という意味です。
そのうえで、条文は暗号資産を二つに分けました。
特定暗号資産。特定の者のみが、その暗号資産を発行する権限を有するものです。改正金融商品取引法の第2条第50項に定義が置かれました。
非特定暗号資産。それ以外、つまり発行する権限を持つ者が特定されないものです。Bitcoinはこちらに入ります。
この二つの言葉が、2026年に日本の法律へ入りました。似た言葉に見えますが、置かれている場所がまったく違います。特定暗号資産には、これから説明する重い義務が付いてきます。非特定暗号資産には、その義務が付きません。
ここで先回りして、一つの疑問に答えておきます。「では、非特定のほうが緩くて危ないのではないか」という疑問です。答えは、いいえ、です。緩いのではなく、義務を課す相手が存在しないのです。相手がいないことと、規制が甘いことは、まったく別の話になります。
なお、これらの用語は法令上のものですので、本記事でも条文を指すときだけ「暗号資産」と表記します。それ以外の箇所では、当協会の表記に従って「暗号通貨」と書きます。
法律が線を引くとき、その線は「何を守るために引かれたのか」を必ず語ります。次章では、この線が何を守るために引かれたのかを考察していきます。
第二章:世間は「規制強化」と読んだ。条文が分けたのは強さではない
改正が報じられたとき、多くの記事が「規制強化」という言葉を使いました。実際、罰則は重くなっています。新設されたインサイダー取引規制に違反した場合、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金が科されます。改正金融商品取引法の第197条の2です。
情報の公表義務も新しく入りました。特定暗号資産の発行者は、発行のときに一度、そして年に1回、継続して情報を公表しなければなりません。財務の監査を受けていない場合には、投資できる金額に上限が設けられます。1件あたり50万円、年間で200万円です。改正金融商品取引法の第27条の59に定められました。
数字だけを並べれば、確かに「強化」です。
では、なぜ当協会は、これを「強化」ではなく「線引き」と呼ぶのでしょうか。
それは、これらの義務が、すべて発行者がいるほうにしか課せられないからです。
情報を公表せよ、と命じるには、命じる相手が要ります。年に1回開示せよ、と義務づけるにも、開示する主体が要ります。インサイダー取引の規制も同じです。「まだ公表されていない重要な事実」を持っている内部の人間がいて、初めて成立します。
ここで、生命保険の証券を思い出してみましょう。保険証券には、必ず引受会社の名前が入っています。契約内容が変わるときは、その会社から通知が届きます。決算も年に1回公表されます。私も、生保の営業をしていた頃は、この当たり前をまったく疑いませんでした。
けれど、その当たり前は「会社がある」ことの上に成り立っています。会社がなければ、通知を出す主体もありません。
もちろん、この考え方が悪いわけではありません。むしろ、発行者がいる商品にとっては、開示こそが利用者を守る唯一の方法です。日本の制度は、その原則を暗号通貨にも丁寧に当てはめました。当協会は、この整理を高く評価しています。
だからこそ、線の向こう側が際立ちます。発行する者がいない暗号通貨に対して、法律は同じ義務を課すことができません。相手がいないからです。
ここで、もう一つの反論を先に潰しておきます。「発行者がいなくても、取引所に義務を課せばよいのではないか」という考え方です。実際、その通りに設計されています。暗号資産取引業者は金融商品取引法の枠組みに入り、取り扱う暗号資産の基準も定められます。
けれど、それは「入口を守る」規制です。通貨そのものの中身を開示させる規制ではありません。この二つは、守っている場所が違います。今回の改正は、その違いを条文の上ではっきりさせました。
これは規制の抜け穴ではありません。設計そのものの違いです。次章では、その「発行者がいる」という状態を、仕組みから分解していきます。
第三章:発行者がいる、とはどういう状態か
「発行者がいる」という言葉は、日常ではあまり使いません。ここを丁寧に分解しましょう。
発行者がいる、とは、次の三つを同時に握っている者が存在する状態です。
一つめ。新しく作り出す権限です。総量を増やす操作ができる、ということです。
二つめ。ルールを変える権限です。手数料、上限、移転の条件などを、後から書き換えられる、ということです。
三つめ。情報を持っている位置です。次に何が起きるかを、利用者より先に知っている、ということです。
スーパーの商品券を思い浮かべてください。あの券を刷るのは、そのスーパーです。有効期限を延ばすかどうかを決めるのも、そのスーパーです。来月から使える店舗が減ると知っているのも、まずそのスーパーです。三つとも、一つの主体が握っています。
だからこそ、制度は商品券の発行元に義務を課します。前払式支払手段としての供託や、残高の表示がそれにあたります。義務を課す相手が、はっきりしているからです。
身近な例をもう一つ挙げましょう。交通系ICカードです。カードに入っている残高は、鉄道会社が発行した記録です。使える店舗の範囲を決めるのも、チャージの上限を決めるのも、その会社です。私たちは毎日それを使っていますが、発行者がいることを意識する場面はほとんどありません。
特定暗号資産も、この構造と同じです。発行する権限を持つ者がいる。よって、その者に情報を公表させることができる。公表前の情報を使った取引を、インサイダー取引として禁じることもできる。制度は、握っている者の存在を前提に組み立てられています。
ここで一つ、補助線を引きます。「発行者がいる」ことは、悪いことではありません。むしろ、責任の所在がはっきりしている、という長所です。何かが起きたときに、誰に説明を求めればよいかが分かります。
問題になるのは、握っている者がいるのに、その者に義務が課せられていない場合だけです。2026年の改正は、まさにそこを埋めました。
では、非特定暗号資産のほうはどうなるのでしょうか。
発行する権限を持つ者がいないため、公表を命じる相手がいません。ルールを書き換える主体もいません。公表前の情報を独占する内部者も、構造上、存在しません。
ここで疑問が生まれます。義務を課せないなら、利用者はどうやって守られるのでしょうか。
すると驚きの発見! 守り方が、そもそも逆向きに設計されていたのです。
発行者がいる仕組みは、「後から開示させる」ことで守ります。発行者がいない仕組みは、「最初から全部見えている」ことで守ります。次章では、この逆向きの設計が、いつ、どのような理由で生まれたのかを考察していきます。
第四章:なぜBitcoinには、発行する者がいないのか
Bitcoinの論文が公開されたのは、2008年10月31日です。世界的な金融危機のさなかでした。翌2009年1月3日に、最初のブロックが生成されています。
この仕組みには、発行を決める会社も、委員会も、運営する組織も置かれていません。代わりに、あらかじめ決められた規則が置かれました。
発行の上限は2,100万BTCです。新しく生まれる量は、およそ4年ごとに半分になります。この半減は、これまで4回起きています。直近は2024年4月でした。誰かが会議で決めたのではありません。最初から、そう書かれていたのです。
最小単位は1satoshi。1BTCの1億分の1にあたります。単位まで最初から定義されているため、後から刻み直す必要もありません。
採掘の難しさも、人の判断では動きません。およそ2週間ごとに、自動で調整される規則になっています。参加者が増えれば難しくなり、減れば易しくなる。会議も、通達も、経過措置もありません。規則が、そのまま実行されます。
そして、記録の持ち方が独特です。取引の記録は、世界中のフルノードが同じものを保持しています。どのノードも、他のノードより優れた情報を持ちません。回線を切って離脱していたノードも、再び接続すれば、空白の期間の記録を無料で受け取れます。
ここが、当協会が最も大切にしている点です。
情報に、上下がないのです。
家の間取り図にたとえてみましょう。ふつうの分譲マンションでは、正確な図面を持っているのは売主です。買い手は、渡された資料の範囲でしか判断できません。Bitcoinのネットワークは、これと逆です。全員が同じ図面を持ち、しかもその図面は、誰でも今すぐ複製できます。
よって、「先に知っている人」という立場が生まれません。インサイダー取引の規制が構造上あてはまらないのは、規制が甘いからではなく、内部者という位置そのものが存在しないからです。
もちろん、これは万能を意味しません。発行者がいないということは、困ったときに問い合わせる窓口もない、ということです。鍵を失えば、再発行してくれる相手はいません。ここは、はっきりと弱点です。
銀行の通帳を失くしても、窓口へ行けば再発行してもらえます。生命保険の証券も同じです。私も、生保の営業をやるまでは、この安心がどれだけ大きな仕組みに支えられているかを考えたことがありませんでした。発行者がいるとは、そういうことなのです。
2017年から、当協会はSDGsとBitcoinの設計思想の接続を研究してきました。17の目標のすべてに、この「情報に上下がない」という在り方が効きます。教育格差も、寄付の透明性も、突き詰めれば情報の非対称の問題だからです。
次章では、この設計の違いが、私たちの生活のどこに顔を出すのかを考察していきます。
第五章:この線引きは、生活のどこに効くのか
制度の話は、生活から遠く感じられます。ここでは、三つの場面に落とします。
一つめ。離れて暮らす家族への、少額の送金
介護のために、月に何度か実家へ仕送りをする。よくある光景です。銀行の振込には手数料がかかり、平日の窓口の時間にも縛られます。金額が小さいほど、手数料の比率は重くなります。
ここで、送る手段の「発行者の有無」が効いてきます。発行者がいる仕組みでは、送金の可否も、手数料の水準も、発行者側の判断で変わりえます。発行者がいない仕組みでは、規則がネットワーク全体で共有されているため、特定の誰かの判断で止まることがありません。
どちらが良い、という話ではありません。速さと窓口の安心を取るなら前者、規則の予測しやすさを取るなら後者です。選ぶには、違いを知っている必要があります。
そして2026年6月1日の改正で、この選択肢は一つ増えました。日本の制度と同等性が確保された外国発行のステーブルコインが、電子決済手段として位置づけられたからです。手数料の比較対象が増えることは、送る側にとって素直に良い変化です。
二つめ。災害のときの寄付
寄付をした人が最も気にするのは、金額ではありません。「本当に届いたのか」です。従来は、受け取った団体の報告書を待つしかありませんでした。年に1回の開示です。
記録が全員に共有される仕組みなら、途中の経路をその場で確認できます。これは、発行者がいないことの直接の帰結です。開示してもらうのではなく、最初から見えている。当協会が「情報の平等」と呼んでいるのは、この状態です。
寄付を集める側にとっても、これは負担の軽減になります。報告書を作る手間が減り、疑いを晴らすための説明も要りません。記録が、そのまま説明になるからです。
三つめ。事業を営む方の、入金までの日数
小さなお店を営んでいると、カード決済の入金が翌月末になることがあります。売上は立っているのに、手元の現金が薄い。仕入れの支払いが先に来る。この時間差が、資金繰りを圧迫します。
時間差が生まれるのは、間に立つ事業者が複数いるからです。中間者が減れば、この日数は縮みます。2026年の改正で仲介業の枠組みが整えられたのも、この層を制度の中に位置づけるためでした。
新しい仲介業には、財務要件が課されていません。自分では通貨を持たず、媒介だけを行うからです。持たない者には、預かった資産を守るための財務基盤を求める理由がない。ここにも、同じ考え方が通っています。握っているかどうかで、義務の重さが決まる。今回の改正を貫いているのは、この一本の物差しです。
三つに共通しているのは、卵の値段のように、日々の暮らしに直接触れる問題だという点です。暗号通貨は、遠い投機の話ではありません。手数料と、日数と、情報の見え方の話です。次章では、ここで生まれやすい誤解を、先回りして解いていきます。
第六章:よくある三つの誤解と、その正体
誤解その一「規制が入ったから、安全になった」
2026年の改正は、事業者への監督を厚くしました。国内資産保有命令が整備され、破綻時に資産が国外へ流出する事態にも手を打てるようになりました。これは、利用者にとって明確な前進です。
けれど、規制は「事業者との関係」を守るものです。ご自身の鍵の管理までは守りません。銀行の預金保険が、家の金庫の管理までは面倒を見ないのと同じです。制度が厚くなるほど、手元の管理は自分の仕事として残ります。
実際、当協会に寄せられるご相談で最も多いのは、取引所の選び方ではありません。鍵をどこに、どう保管するか、です。制度がどれだけ整っても、この問いは残り続けます。
誤解その二「非特定暗号資産は、無法地帯である」
発行者に義務を課せないことと、利用者が放置されることは、別の話です。暗号資産取引業者は金融商品取引法の枠組みに入り、取り扱う暗号資産の基準も定められます。取引の入口は、これまで以上に整えられます。
そもそも、非特定暗号資産の記録は、誰でも検証できます。監査法人に頼まなくても、自分のパソコンで確かめられます。開示を待つ必要がない、という意味では、透明性はむしろ高いのです。
上場企業の有価証券報告書は、決算日から3か月ほど経ってから公表されます。過去の姿を、時間をおいて見ることになります。非特定暗号資産の記録には、その遅れがありません。今この瞬間の状態を、そのまま確かめられます。
誤解その三「発行者がいるほうが、必ず信頼できる」
発行者がいることは、責任の所在がはっきりする長所です。当協会も、そこを否定しません。日本の制度が発行者に開示を求める設計を選んだことは、正しい判断だと考えています。世界でも早い段階から利用者保護の枠組みを整えてきた点は、率直に評価されるべきです。
ただし、信頼の置き場所は変わります。発行者がいる仕組みでは、その発行者を信頼することになります。発行者がいない仕組みでは、公開された規則と、それを検証する自分の目を信頼することになります。
どちらにも信頼は要ります。消えるのではなく、置き場所が移るだけです。
ここは、ご家族に説明するときの勘所でもあります。「信頼しなくていい仕組み」と説明すると、たいてい不信を招きます。「信頼する相手が、会社から規則に変わる仕組み」と言い換えると、伝わり方がまるで違ってきます。
この三つの誤解は、どれも「知らなかった」から生まれます。当協会が12年間で最も多く見てきたのは、理解できない人ではありません。説明を受ける順番が逆だった人です。
怖いのではありません。順番を知らないだけです。次章では、その順番そのものを整理していきます。
第七章:線引きを知ると、学ぶ順番が変わる
多くの方は、暗号通貨をこの順番で学ぼうとします。まず値段を見る。次に銘柄を選ぶ。それから買い方を調べる。
この順番だと、必ずどこかで止まります。何故なら、判断の土台になる仕組みを飛ばしているからです。
当協会は、次の順番をおすすめしています。
第一に、お金そのものの仕組みです。円が誰によって発行され、どのように増えるのかを知ることから始めます。ここを飛ばすと、暗号通貨と比べる相手が見えません。
第二に、発行者の有無です。まさに、今回の法改正が引いた線です。手元にある通貨や電子マネーを、この基準で並べ直してみましょう。交通系ICカードは発行者がいます。銀行預金も発行者がいます。並べるだけで、輪郭がはっきりします。
第三に、記録の持ち方です。誰が台帳を持っているのか。台帳に残高欄はあるのか。ここは初級講座でも、受講後にいちばん忘れられやすい部分です。
第四に、鍵の管理です。ここまで来て、はじめて実際の取り扱いに進みます。
この順番で学んだ方は、価格が動いても揺れません。値段は結果であり、判断の材料ではないと分かるからです。
ここで、よくいただく反論に答えておきます。「順番など気にせず、まず少額で買ってみればよいのでは」というご意見です。おっしゃる通り、手を動かすことは大切です。もちろん、少額から始めることが悪いわけではありません。
ただ、買った後に必ず来る問いがあります。「これは、何を持っている状態なのか」という問いです。ここに答えられないまま値動きだけを見ていると、続きません。順番は、続けるための土台です。
当協会が毎月開催している暗号通貨技能検定講座では、受講前のアンケートで受講動機を伺っています。最も多いのは「人に伝えたい」で48%です。「投資・資産」は31%でした。第3位は「職業上の必要」で21%です。金融、証券、FP、保険、IT の実務者の方々です。
そして、受講後にもう一度伺うと、およそ7割の方が「人に伝えたい」に変わります。仕組みが分かると、伝えたくなる。この変化が、12年間ずっと続いています。
2026年の法改正は、実務者にとって説明の負担が増える変更です。顧客に「特定と非特定は何が違うのですか」と聞かれる場面は、これから確実に増えます。制度の暗記ではなく、線引きの意味から理解しておきましょう。
暗記した知識は、法律が変わるたびに使えなくなります。仕組みから理解した知識は、条文が変わっても残ります。今回のように、施行日が2026年6月と2027年に分かれる改正では、この差がそのまま現場の差になります。
当協会の初級講座は、受講後1年間、何度でも無料で再受講いただけます。制度が動く年に、同じ話を何度でも聞き直せる。この設計にしたのは、まさにこういう年のためでした。
まとめ:法律は、Bitcoinの設計思想に名前を付けた
2026年7月15日に成立し、7月23日に公布された金融商品取引法等の改正法は、暗号通貨を二つに分けました。発行する権限を持つ者がいる「特定暗号資産」と、いない「非特定暗号資産」です。
分けた基準は、値段でも人気でもありませんでした。発行者の有無という、構造の一点です。
発行者がいる側には、情報の公表義務が課されます。年に1回の継続開示があり、インサイダー取引の規制もかかります。守り方は「後から開示させる」です。
発行者がいない側には、その義務を課す相手がいません。代わりに、記録が最初から全員に共有されています。守り方は「最初から全部見えている」です。
この二つは、優劣ではありません。設計の違いです。そして日本の法律は2026年、その違いを条文の言葉として認めました。
当協会が12年間お伝えしてきたのは、まさにこの点です。Bitcoinのネットワークでは、すべてのフルノードが同じ情報を持ちます。ノードの間に格差がありません。一時的に離れていたノードも、戻ってくれば空白の期間を無料で埋められます。
この在り方が、人間の社会でも当たり前になったとしたら。私たちは、いまよりも豊かな気持ちで毎日を過ごせるのではないかと感じています。
制度は変わりました。けれど、変わったのは呼び名と手続きです。仕組みそのものは、2009年1月から一度も変わっていません。「暗号資産交換業」が「暗号資産取引業」になっても、上限が2,100万BTCであることも、最小単位が1satoshiであることも、そのままです。
だからこそ、学ぶ順番は今日から変えられます。値段を追う前に、発行者の有無から並べ直してみましょう。手元の交通系ICカード一枚からでも始められます。
決断は、いつでも構いません。決断できる状態は、今日つくれます。
この記事について
- 執筆者:山下健一(一般社団法人日本クリプトコイン協会 代表理事)
- 公開日:2026年9月9日
- 最終更新日:2026年9月9日
- 参考資料:金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)/金融商品取引法等の一部を改正する法律(2026年7月15日成立・7月23日公布)/改正資金決済法(2025年6月13日公布・2026年6月1日施行)
- 位置づけ:本記事は当協会の公式見解です。

暗号通貨技能検定とは
こんな想いの方々が受講されています
- 暗号通貨やブロックチェーンについて、知識の有無にかかわらず興味関心がある。
- 同一労働・同一賃金が施行された中、資格を得て他者との収入に違いを出したい。
- 自社のビジネスにブロックチェーン技術がどの様に導入できるのかを知りたい。
- SDGsの目標達成に対し、ブロックチェーン技術がどの様に関係していくのかを知りたい。
- 暗号通貨に関する情報を、仕組みや構造から自分で読み解く力を身につけたい。
- 暗号通貨の始め方や取り扱いを覚えたいが、書店に並んでいる本やYoutubeを見ても理解が進まない。
- 講師としての資格を取得し、より多くの方々へ暗号通貨の思想やブロックチェーン技術の概念を伝えたい。
![暗号通貨技能検定[初級]講座の流れ](https://japancryptocoin.org/wp-content/uploads/講座の流れ図.png)
投稿者プロフィール
- 代表理事
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暗号通貨の思想とブロックチェーンの概念は、金融システムをより安全に低コストで運用できるだけでなく、銀行口座を持たない20億人の生活環境を底上げします。また、寄附や募金へ広く活用されることは、SDGsの達成にも貢献する事でしょう。一人でも多くの方と共に、正しい暗号通貨システムの可能性を学び、実生活や仕事にも取り入れて頂けるよう、当協会はこれからも「暗号通貨技能検定講座」の開催を重ねて参ります。
【資格・受賞歴】
・日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー
・東久邇宮記念賞受賞
・東久邇宮文化褒賞受賞
・特許:特開2016-081134号
・特願:2018-028585
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