朝日新聞社主催の「朝日地球会議2019」が10月14日~16日の3日間開催されました。
「朝日地球会議2019」は、さまざまな課題を解決するために国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」への道筋を、国内外から招く政治、経済、科学技術分野の有識者やオピニオンリーダー、企業人と話し合う場です。
最終日の16日(水)には、帝国ホテル東京にて、19もの講演やパネル討論が開かれ、以下の2つに参加してきました。
- 対談『ジェンダー格差「世界最小」のアイスランドに学ぶ』
- パネル討論『ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか』
今回は『ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか』についてお伝えいたします。
ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか
<パネリスト>
ラリー・ドース
国際NGO「iRespond」副代表(アジア太平洋担当)
テキサス・クリスチャン大学客員研究員
京都大学医学部付属病院 医療情報企画部長・病院長補佐
京都大学大学院医学研究科・情報学研究科 教授
<コーディネーター>
朝日新聞編集委員
社会福祉士
※顔写真は、朝日地球会議2019のWebサイトより
ラリー・ドース氏の講演『生体認証の技術をどう活かすか』
タイの難民、東南アジアに制度が整っていない社会的弱者にどう医療・教育サービスを提供し、記録を維持したらよいのでしょうか。
生体認証の仕事をしていますが、生体認証と聞いて怖いと感じます。
インドでは、大きなシステム制度「アドハー」(Aadhaar)が導入されています。インドの生体認証付き国民識別番号には、11億の人々が登録されています。「アドハー」には、生の個人情報をそのまま保存しているという設計上の大きな欠陥があります。インドの悪意のある人が情報狙い、情報が引き出されていました。
こういったセキュリティ問題は、日本の医療制度にも関わってくることです。
人工知能、生体認証の技術は法律より先にできています。技術の進展は、止められません。
生体認証の中でも指紋は80%の正確さでは、精度高くありません。虹彩の生体情報は、精度が高いのです。
写真にVサインで写ると指紋が採られてしまいます。虹彩は、一般の写真から情報を取られることはないので、もう少し保護されています。システム設計のデザインの中で個人情報が保護されています。
色々な情報が載っていても、いらないものは省き、求められているもののみ取り出すことが必要です。
登録することにより、個人の医療カルテを作ります。日本のデザイン設計の技術で、誰にでも見せないようにプライバシーを守ります。
タイの1つの難民キャンプに35,000人もの大勢の人々が暮らしています。そこでは、救援物資が届かないようにして人が居なくなるようにしたり、人の出入りがあります。難民キャンプで生まれてくる子どももいます。
そこで、生体認証とブロックチェーンを使い、デジタルウォレットを作りました。仕事は、医療記録だけでなく、難民キャンプでの教育などもあります。
システムの設計には、悪いことができないように、間違いを起こせない設計が必要です。
黒田知宏氏の講演『Medicine of Digital Age 情報化時代の医療』
FDAでは、標準医療を規定しており、それに沿って治療します。治療しても効かない人もいますが、癌の治療の場合、75%が効いていません。
癌の細胞での遺伝子変化を調べて、効く薬を記録から検索します。がんゲノムパネル検査といい、2019年6月に保険収載されました。NGSを検査機器にかけてゲノムを調べます。
過去の記録と比べるには、ビッグデータが必要です。過去のデータより、専門家同士でディスカッションして治療方法を決めます。
日本のビッグデータは、どう作られているのでしょうか。日本では、どの病院へも行けますし、保険でカバーされています。アメリカでは保険ありません。
日本では、どこに行っても同じ料金です。日本では、国で治療の細かいルールが決められています。
請求書を集めておけば、誰が何の治療を行ったのかデータは集まります。平成20年から電子レセプトより電子データが集まって得られているNDBという国民全体の医療データベースが構築されています。しかし、これでは検査の結果など、情報の深さがわかりません。
もっと深い情報を癌においては、国立がんセンターや学会で集めています。しかし、限られた病気・患者からしかデータは来ません。
生涯型電子カルテは、個人の生涯にわたる医療情報を電子カルテ化して、一元管理することです。PHR(パーソナルヘルスレコード)ともいいます。このデータは病院にあるので、データを集める仕組みを民間のお金を使ってやろうとしています。
2017年には、情報銀行の実証実験が行われました。でも、認定作業が厳しくて、まだ認定された事業がいません。それでも、今年か来年には出てくるだろうと思われます。
医療産業は民間でデータが集められ国に報告・公開されることになります。そのデータより人口知能(AI)が診断するようになります。そのためには、コンピュータにわかりやすいデータを入力することが必要です。人が手で入力するのではなく、医療機器を使ったらそのままそれがインターネット経由でインプットされるようになります(IoT)。
病気はゲノムと環境習慣で生まれることがわかっています。検査してデータを取って、AIがビッグデータと比べ見守ってくれる。そんな先制医療の世の中がやってきます。
それに必要なものは、データとID・管理する仕組み・そして、法律やルールです。
ラリー・ドース氏と黒田知宏氏の討論
黒田氏の話、複雑なシステムと驚いています。難民のデータは、私たちがシステムの中に組み込まれなければなりません。子どもや技術になれていない高齢者を保護するために、同意をどうやって求めるのかが問題です。
黒田
日本でもルールは、決まっていませんが、未成年の場合は親権者が確認します。法律はデジタルに追いついていません。医療データについての先進国、北欧は相当細かく決めています。インターネットで学校の成績データを見られますが、子どもの年齢がいくつまで親が閲覧できるのか、また養子の場合どうするのかなど細かいルールが必要です。知識としてのコンピュータ技術は、教育の問題でもあり、バリアシップを考えないといけません。まだまだディスカッションされていなくて、日本ではまだそこまで行っていません。
浜田氏
ブロックチェーン(分散型台帳技術)で何ができるのでしょうか?
ラリー氏
タイの難民キャンプの人たちは、スマホを持っていて情報が使えます。そこで、iRespondの虹彩による生体認証技術とブロックチェーン(デジタルウォレット)を組み合わせました。ブロックチェーン上に個人のIDが発行されます。キャンプを立ち去らなければならないこともありますが、どこにいても医療情報にアクセスできるようにしました。
黒田氏
ブロックチェーンを使えば、ゼロ知識証明ができます。ブロックチェーンの場合、全部のデータを見せることなく、必要とする一部のデータのみ渡すことができます。
例えば、医療データの個人情報は隠したままで、ミャンマーの難民が持っているIDのみ渡すことができます。
ラリー氏
日本では、個人情報に対する感応度が高いです。インドなど他の国では、個人情報提供するのにプライバシーに対する懸念がありません。日本ではプライバシーの意識が高いので、アクセスできないことがあります。虹彩カメラはどんどん安くなり携帯可能になり、高度なテクノロジーが広まっていくのに。
黒田氏
プライバシーを守ることと情報提供に関するバランスが大事です。日本では守らなければならないものがいっぱいあります。どのくらいのリスクか話もなく、病院のデータは、やりとりされていません。このデータを出すことで、どんな利益があるのか、どんなリスクがあるのか、バランスを取り同意を取っていかないと。技術は早いスピードで動いていますので、このままでは世界中から置いて行かれています。
まとめ
制度が整っていない社会の人々に医療などのサービスを提供し、記録を維持するためにデジタルウォレット(ブロックチェーン)を使いました。虹彩の生体認証を使い、個人IDとパスワードを発行し、スマホで医療情報にアクセスできるようにしました。これにより、どこへ移住しても医療データを使うことができます。
情報化時代の医療は、病気の症状をビッグデータより分析診断し、効果の高い治療法を行うようになります。そのためには、医療システムのビッグデータが必要です。
日本では、医療システムのビッグデータは揃いつつありますが、まだ情報の深さが足りません。IoT(モノのインターネット)を使い、直接データを取り込む仕組みを考えています。仕組みができて情報が取れるようになれば、AIに健康状態の見守りや病気の診断させたりできます。
社会全体が医療を提供し医療を支える、サイバーフィジカルシステムとなります。そのためには、情報の内容が正しくAIが使えるようなビッグデータを構築すること、個人IDと情報を管理するセキュリティの整った仕組み、そして法律やルールが必要です。
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投稿者プロフィール
- JCCA 編集部は、協会主催の様々なイベントや講座、暗号通貨システムやブロックチェーン技術に関する時事ニュースなどを含め、例え話を用い初心者の方にもわかりやすく解説してまいります。/暗号通貨の『普及活動』、それが子供達の笑顔を創造する。
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