金曜の夜にスマートフォンで振込をすると、相手の口座に数秒で入金が反映されることがあります。2018年10月から、銀行の振込は、休日や深夜でも即時に届く仕組みが動いているからです。
「振込はもう24時間できる。お金に営業時間なんて、とっくに無くなった」。そう感じている方も多いと思います。もちろん、そう感じることが悪いわけではありません。それだけ日本の振込の仕組みが、静かに、よく働いてきた証です。
しかし、それだけでしょうか。
お給料の振込日が連休に重なると、前倒しになる。会社の入金が金曜の夕方を過ぎると、月曜まで動かない。窓口で15時を過ぎると、翌営業日の扱いになる。私たちは今も、「営業日」という見えない時計に合わせて、お金の段取りを組んでいます。
この時計は、銀行の窓口だけのものではありません。保険料の引き落とし、家賃の振替、取引先への支払い。暮らしのあちこちに、同じ時計が組み込まれています。
2026年9月30日、金融庁で一つの会議が始まりました。名前は「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」です。金融庁はそこで、ブロックチェーンを土台にした決済の条件として、まず「24時間365日連続稼働」を挙げました。
このニュースを「国が暗号通貨を後押しし始めた」と読んだ方もいるでしょう。けれど、資料を読むと、主役は値動きする通貨ではありません。問われているのは、「なぜ、お金には営業時間があったのか」という、もっと手前の問いです。
私は生命保険の営業をしていた頃、保険料の引き落とし日が休日に重なると、翌営業日に回るという説明を、何度もお客様にしてきました。当時は、それを当たり前のことだと思っていました。
この記事では、価格の話を一切しません。扱うのは、お金が夜に眠る理由と、眠らない仕組みが生まれると暮らしの何が変わるのか、だけです。専門用語は、出てきた場所でその都度ほどいていきます。
この記事で扱う3点
- 2026年9月30日に始まった「オンチェーン金融フォーラム」は、何を検討する場なのか
- 銀行のお金に、なぜ「営業時間」が残っているのか
- 止まらない決済の仕組みは、暮らしのどこに効き、どこに注意が要るのか
こんな方に向けた記事です
- 暗号通貨に関心はあるものの、まだ始めていない方
- 「オンチェーン金融」という言葉を、ニュースで初めて目にした方
- 週末や連休をまたぐ入金に、仕事で悩まされてきた方
- 金融・保険・ITの実務で、ブロックチェーンについて聞かれて答えに迷った方
- 価格の話ではなく、仕組みから理解したい方
それでは、本文へとお進みください。
目次
第一章:2026年9月30日、金融庁で始まった会議
まず、事実を確認します。
2026年9月30日の14時から1時間、金融庁で「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の第1回が開かれました。議事は、関係省庁などからの報告と、出席者による討議です。
オンチェーンとは、「ブロックチェーンの上で」という意味です。取引の記録も、お金の受け渡しも、同じブロックチェーンの記録の上で行う。これを、金融庁は「オンチェーン金融」と呼んでいます。
金融庁の説明資料は、オンチェーン金融に求める性質を三つ挙げています。一つめが「24時間365日連続稼働」。二つめが「商流・物流と繋がるプログラマビリティ」。三つめが「決済基盤として信頼される安定性・安全性」です。
プログラマビリティとは、「この条件がそろったら、自動でこう動く」という約束を、お金の動きそのものに組み込めることです。たとえば、荷物が届いたことが記録されたら、代金が自動で支払われる、といった使い方です。
自動販売機を思い浮かべると分かりやすいでしょう。お金を入れてボタンを押せば、店員がいなくても飲み物が出てきます。条件と結果が、仕組みの中で結びついているのです。
フォーラムの下には、二つの研究会が置かれます。一つは、デジタル技術と分散型の金融に対応するための環境整備を扱う研究会です。もう一つは、金融機関がAIを健全に使うための研究会です。中間整理は、2027年の初めに予定されています。
検討の範囲は広く、資料には次のような項目が並んでいます。さまざまな資産のトークン化。ステーブルコインの制度。DEXやDeFiと呼ばれる、仲介者を置かない取引の仕組み。そして、それらにつなぐウォレットを提供する業者の扱いです。
関係する機関の取り組みも、同じ資料にまとめられています。日本銀行は、銀行どうしの決済に使う「日銀当座預金」をオンチェーンに対応させることについて、年内に論点と道筋の検討状況をまとめる予定です。デジタル庁は、ステーブルコインやトークン化預金を、公金の給付に使えるかを検討しています。財務省は、国債の元本や利息の支払いをオンチェーンで行うことを検討しています。
すると驚きの発見!中央銀行のお金の置き場所と、国の借金の記録の置き場所が、同じ一つの机の上に並んだのです。
もちろん、今回の会議は、何かを決めた場ではありません。何を、どの順番で検討するのかを、官と民で共有した最初の場です。
では、なぜ「24時間365日」が、条件のいちばん最初に置かれたのでしょうか?
それは、今の銀行の決済が、まだ完全には眠らずにいられないからです。次の章では、よく耳にする「振込はもう24時間できる」という理解から、確かめていきます。
第二章:「振込はもう24時間できる」は、半分だけ正しい
日本の銀行どうしの振込は、「全銀システム」と呼ばれる仕組みが支えています。稼働を始めたのは1973年です。半世紀にわたり、全国の銀行のあいだで、私たちの振込を運んできました。
もちろん、全銀システムが劣った仕組みだというわけではありません。毎日、膨大な数の振込を、ほとんど止まることなく処理してきました。世界でも、早くから銀行どうしの即時の振込を実現した、誇ってよい基盤です。
そして2018年10月9日の15時30分、この全銀システムに「モアタイムシステム」が加わりました。それまで、他行への即時の振込は、平日の8時30分から15時30分までに限られていました。モアタイムシステムによって、夜間や休日でも、他行の口座に即時に届くようになったのです。稼働の時点で、約500の金融機関が参加しました。
ここまでを読むと、「やはり、もう24時間できる」と感じるはずです。けれど、話はここで終わりません。
一つめに、すべての金融機関が、すべての時間に対応しているわけではありません。銀行によっては、深夜の数時間や、土日の夜を取り扱いの時間外にしています。振込先の金融機関がモアタイムに参加していなければ、夜間や休日の振込は翌営業日の入金になります。
二つめに、窓口で手続きする振込は、今も営業時間に縛られています。窓口で15時までに振り込めば当日に入金される、というのが一般的な目安です。中には、14時以降を翌営業日の扱いにする金融機関もあります。
三つめに、会社が使う大口の振込や、お給料の一括振込は、営業日を前提に動いています。多くの会社では、支給日の数営業日前に振込のデータを銀行へ渡します。連休前にお給料が前倒しになるのは、この段取りのためです。
そして、もう一つ。2023年10月10日、全銀システムの一部で障害が起き、10の銀行などで他行あての振込が行えない、または遅れるという事態が起きました。復旧が確認されたのは、12日の朝です。原因は、システムを新しい環境へ移したときの、プログラムの不具合でした。
この障害は、私たちにある事実を教えてくれました。私たちが「24時間動いている」と感じていた振込は、一つの中心となるシステムが、毎日休まず働いてくれることで成り立っていた、ということです。
つまり、今の振込は「24時間受け付けてくれる」けれど、その奥には、営業日と中心のシステムを前提にした段取りが、今も残っています。
では、なぜ銀行のお金は、完全には眠らずにいられないのでしょうか。次の章で、その仕組みをほどいていきます。この記事でいちばん長い章になります。
第三章:お金が夜に眠るのは、帳簿が分かれているから
ここでは、大阪に住むAさんが、東京に住むBさんへ1万円を振り込む場面で考えます。Aさんは甲銀行に、Bさんは乙銀行に口座を持っているとしましょう。
まず押さえておきたいのは、Aさんの1万円という預金は、どこかに紙幣で置かれているわけではない、ということです。甲銀行の帳簿に、「Aさんの残高は〇〇円」と書かれている。預金の正体は、この記録です。
振込とは、甲銀行の帳簿からAさんの1万円を減らし、乙銀行の帳簿でBさんの1万円を増やすことです。ここで大切なのは、甲銀行と乙銀行が、それぞれ別の帳簿を持っているという点です。
では、甲銀行の帳簿で減った1万円は、どうやって乙銀行に渡るのでしょうか?
それは、銀行どうしが、日本銀行に持っている口座を使って受け渡すからです。この口座が「日銀当座預金」です。
ただし、振込のたびに1件ずつ、日本銀行の口座でお金を動かしているわけではありません。全銀システムは、銀行どうしの振込の知らせを、まず次々と運びます。そして、甲銀行が乙銀行に払うべき額と、乙銀行が甲銀行に払うべき額を差し引きし、残った差額だけを、決められた時刻に日銀当座預金の上で受け渡します。
日本銀行の説明によれば、全銀システムなどの民間の決済にかかわる資金のやり取りは、日銀ネットという仕組みの上で、日銀当座預金の振替によって処理されています。その日銀ネットの稼働時間は、2016年2月に19時から21時まで広げられました。広げられたとはいえ、今も稼働時間のある仕組みです。
ここで、家の中のたとえを使います。
ある町内に、各家庭が自分の家計簿をつけている、と想像してください。お隣に1万円を貸したら、自分の家計簿にもお隣の家計簿にも、それぞれ書き込みます。そして月末に、町内会長の家に集まって、互いの家計簿を突き合わせ、貸し借りの差額だけを清算します。
この町内では、家計簿に書き込むことは、いつでもできます。けれど、本当に清算が済むのは、町内会長の家が開いている時間だけです。
これが、今の銀行の決済の姿です。モアタイムシステムによって、「書き込み」は夜でもできるようになりました。けれど、銀行どうしの最終的な清算は、日本銀行という町内会長の家が開いている時間に行われます。
一方、ブロックチェーンの上の決済は、違う形をしています。
町内の全員が、一冊の同じ帳簿を見ている、と想像してください。お隣に1万円を渡したら、その一冊に一行が書き足されます。あとで突き合わせる相手の家計簿は、そもそもありません。書き込んだ時点で、清算も終わっています。
Bitcoinは、この「一冊の帳簿」を、世界中の参加者が同じ写しを持つ形で実現しました。Bitcoinのネットワークでは、およそ10分ごとに、新しい取引の束が帳簿に書き足されます。そこに、営業日という考え方はありません。
つまり、お金が夜に眠る理由は、お金そのものにあるのではありません。帳簿が銀行ごとに分かれていて、突き合わせの時間が要ることにあるのです。
第四章:営業時間は、人が照合していた時代の名残
では、なぜ銀行の帳簿は、銀行ごとに分かれて作られてきたのでしょうか?
それは、帳簿をつけ、突き合わせる仕事を、長いあいだ人が担ってきたからです。
コンピュータが無かった時代、帳簿は紙でした。紙の帳簿は、一つの場所にしか置けません。そして、銀行ごとに自分の帳簿を持ち、それぞれが責任を持って管理する。これが、いちばん確かなやり方でした。
銀行どうしの貸し借りは、担当者が書類を持ち寄り、突き合わせて清算していました。手形や小切手を各銀行が持ち寄って交換する「手形交換所」は、その代表です。人が集まって照合するのですから、そこには当然、始まりと終わりの時刻があります。
もちろん、この仕組みが悪いわけではありません。帳簿を分けて持つことには、一つの銀行に何かが起きても、ほかの銀行の記録が守られるという強みがあります。人が照合することで、誤りや不正に、人の目で気づくこともできました。
コンピュータの時代になっても、この形はそのまま受け継がれました。全銀システムは、銀行ごとの帳簿のあいだで知らせを運び、差額を清算する仕組みとして作られました。紙を運んでいた仕事を、電子の知らせに置き換えたのです。
私は、社会人として最初の16年を技術系の仕事で過ごしました。その頃の現場でも、大事なデータの照合は、夜間にまとめて行うのが一般的でした。昼は受け付け、夜にまとめて突き合わせる。この段取りは、銀行に限らず、多くの仕組みに残っています。
よって、私たちが「営業時間」と呼んできたものの正体は、帳簿を突き合わせる人や仕組みの稼働時間でした。お金の性質ではなく、照合の段取りの性質だったのです。
ここで、まったく違う出発点から生まれた仕組みがあります。
2009年1月3日、Bitcoinの最初のブロックが作られました。Bitcoinの設計は、銀行ごとに帳簿を分けるのではなく、最初から「全員が同じ一冊を持つ」という形を取りました。誰か一人が店番をする仕組みではないので、店を閉める時刻もありません。
そして、全員が同じ帳簿を持つからこそ、突き合わせの手間がなくなります。新しく書き足される一行が正しいかどうかは、世界中の参加者が、同じルールで確かめます。
この設計は、帳簿を一か所に置かずに、しかも二重に使わせないという、難しい問題を解いたものでした。そして、営業時間のない決済は、その副産物として生まれたのです。
今回、日本銀行が日銀当座預金のオンチェーン対応を検討すると示したことは、この流れの中で読むと意味がはっきりします。町内会長の家の帳簿そのものを、全員が同じ形で見られる帳簿に近づけられないか。その検討が、中央銀行の側から始まったということです。
第五章:止まらない決済は、暮らしのどこに効くのか
ここまでの話は、銀行や役所の話に聞こえたかもしれません。けれど、お金が眠らなくなると、その変化は私たちの暮らしにも届きます。ここでは、四つの場面で考えます。
一つめの場面は、離れて暮らす親の介護です。
土曜日の夕方、施設から「急ぎで立て替えてほしい費用がある」と連絡が来たとします。モアタイムに参加している銀行どうしなら、すぐに届きます。けれど、施設の口座が非参加の金融機関だったり、取り扱いの時間外だったりすれば、入金は週明けです。
介護の現場は、営業日を選んでくれません。お金が届く時刻を気にせずに済むことは、離れて暮らす家族にとって、小さくない安心です。
二つめの場面は、小さな会社の資金繰りです。
金曜日の16時に、取引先から入金の予定があったとします。入金が月曜に回れば、その週末に払うはずだった仕入れの代金を、別のお金で立て替えなければなりません。
大きな会社は、手元に余裕を持てます。けれど、小さな会社ほど、この「二日半の空白」が重くのしかかります。そして連休が重なれば、空白は四日にも五日にも広がります。何故なら、銀行が開かない日が続くと、お金の受け渡しもまとめて止まるからです。
三つめの場面は、災害のときの給付です。
大きな災害が起きると、国や自治体から支援のお金が給付されることがあります。デジタル庁は、ステーブルコインやトークン化預金を、公金の給付に使えるかを検討しています。
災害は、平日の昼に起きるとは限りません。被災した方の手元に、曜日や時刻を問わず、確実に届く仕組みがあること。そして、誰にいつ届いたかが、あとから確かめられる記録として残ること。この二つは、給付する側にとっても、受け取る側にとっても大切です。
四つめの場面は、AIが支払いを行う場面です。
最近では、AIに旅行の予約や買い物の比較を任せる人が増えてきました。国際通貨基金(IMF)は、2026年4月の報告で、AIエージェントが支払いのあり方を変えていくと論じています。金融庁の資料は、この変化を「Click-to-Pay」から「Decide-to-Pay」への移行と表しています。
たとえば、AIに「この条件に合う航空券が出たら、予約して払っておいて」と頼んだとします。条件に合う席が出るのは、日曜日の深夜かもしれません。
人がボタンを押して払う時代から、人が決めた条件に従って、AIが払う時代へ。AIは夜も休日も働きます。そのとき、支払いの仕組みのほうが営業日に縛られていると、AIはそこで待たされることになります。
介護、資金繰り、災害、そしてAI。どの場面でも、問われているのは「お金が、必要なときに届くかどうか」です。お金が眠らない仕組みは、速さの話である前に、暮らしの安心の話なのです。
第六章:よくある三つの誤解と、その正体
新しい仕組みの話が出ると、期待と不安の両方から、誤解が生まれます。ここでは、特に多い三つを取り上げます。
一つめの誤解は、「オンチェーン金融とは、暗号通貨で支払うことだ」というものです。
第一章で見たとおり、検討の対象には、円建てのステーブルコイン、銀行の預金をトークンにしたもの、日銀当座預金、そして国債の支払いまでが含まれています。円という単位は、そのままです。変わろうとしているのは、お金の単位ではなく、お金の記録を置く場所です。
ですから、オンチェーン金融が広がったからといって、私たちの給料が値動きする通貨で支払われるようになるわけではありません。けれど、その土台にある「全員が同じ帳簿を見る」という設計は、Bitcoinが2009年から実際に動かしてきたものです。
二つめの誤解は、「24時間止まらないなら、それだけで安全だ」というものです。
止まらない仕組みには、裏側があります。間違った送金も、止まらずに届いてしまうということです。銀行の振込なら、組み戻しという手続きで、相手の同意を得てお金を戻せる場合があります。ブロックチェーンの上の取引は、一度書き足されると、原則として取り消せません。
もちろん、取り消せないことが悪いわけではありません。誰も勝手に記録を書き換えられないからこそ、その記録を信じられるのです。ただし、その強みを受け取るには、送る前に宛先と金額を自分で確かめる、という一手間が欠かせません。
三つめの誤解は、「仲介者のいない取引は、規制の外にある無法地帯だ」というものです。
DEXとは、取引所の運営会社を置かずに、プログラムで交換を行う仕組みです。金融庁の資料は、DEXの開発者が自ら勧誘をせず、人の関わる部分が少ないという性質を認めています。欧米では、一定のDEXを規制の対象外と整理している例もあります。
一方で、資料は、プログラムの不備による利用者の損害や、資金洗浄に使われるおそれも挙げています。そこで、技術の性質に合わせて「過不足のない」規制の方法を検討するとしています。具体的には、国内の利用者にDEXへの入口となる画面を提供する業者に、説明の義務や資金洗浄の対策を課すことが検討されています。
ここで大切なのは、規制を「敵」と見ないことです。仲介者がいない仕組みでは、誰が利用者を守るのかを、新しく考え直す必要があります。仕組みに合った守り方を探すことは、利用者のためでもあり、技術を育てるためでもあります。
誤解の正体は、どれも同じところにあります。言葉の印象だけで、「怖い」か「夢の道具」かに振り分けてしまうことです。
第七章:仕組みが分かると、お金の段取りが変わる
ここまで読み進めていただいた方は、「24時間振込」と「オンチェーン金融」の違いを、自分の言葉で説明できるようになっているはずです。
前者は、帳簿が分かれたまま、受け付けの時間を広げた仕組み。後者は、帳簿そのものを一つにして、突き合わせの時間をなくそうとする仕組みです。
この違いが分かると、日々のお金の段取りの見え方が変わります。
まず、自分の暮らしや仕事のどこに「営業日の前提」が隠れているかに、気づけるようになります。お給料の振込日、家賃の引き落とし日、取引先からの入金日。連休の前に、どの支払いが前に倒れ、どの入金が後ろに倒れるのか。それを、仕組みの側から説明できるようになります。
次に、新しい仕組みの「強み」と「引き換えにするもの」を、両方から見られるようになります。止まらないこと、取り消せないこと、仲介者がいないこと。それぞれの強みには、必ず裏側の注意があります。両方を知っている人は、勧誘の言葉にも、不安をあおる言葉にも、振り回されません。
金融や保険、ITの実務に関わる方にとっては、お客様や社内からの質問に答える力にもなります。「ブロックチェーンになると、何が変わるのですか」と聞かれたとき、「帳簿の突き合わせがなくなります」と一言で答えられるようになります。
ここで、学ぶ順番について触れておきます。
当協会は、暗号通貨を学ぶとき、仕組みを先に、個々の商品や銘柄は後に、という順番をおすすめしています。家を建てるときに、間取りより先に土台を固めるのと同じです。
オンチェーン金融も、ステーブルコインも、トークン化預金も、突きつめると「全員が同じ帳簿を持つ」という一つの土台の上に建っています。その土台を最初に示したのが、Bitcoinでした。だからこそ、Bitcoinの設計を学ぶことは、これから増えていく新しい仕組みのすべてを読み解く近道になります。
逆に、土台を知らないまま、一つひとつのサービスを追いかけると、ニュースが出るたびに振り回されます。価格が上がった、下がった、という話ばかりが目に入り、本当に変わっていることが見えなくなります。
「自分が日銀当座預金を使うわけではない」と感じる方もいるでしょう。その感覚は、自然なものです。
けれど、仕組みを知る価値は、自分で使うかどうかだけでは決まりません。家族から「夜でも送れるの?」と聞かれたとき、仕組みで答えられること。急ぎの送金をあおる連絡に、「それは取り消せる送り方ですか」と問い返せること。これが、仕組みを知ることのいちばん身近な効き目です。
決断は、いつでもいい。けれど、決断できる状態は、今日からつくれます。
まとめ:営業時間は、お金ではなく照合が持っていた
2026年9月30日、金融庁で「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の第1回が開かれました。オンチェーン金融に求める性質として、最初に挙げられたのは「24時間365日連続稼働」でした。
日本の振込は、1973年から全銀システムに支えられ、2018年10月にはモアタイムシステムによって、夜間や休日にも即時に届くようになりました。これは、日本の金融が積み重ねてきた、誇ってよい成果です。
けれど、その奥には、銀行ごとに分かれた帳簿と、それを突き合わせる時間が残っています。窓口の15時、お給料の前倒し、週末をまたぐ入金、そして2023年10月の障害。どれも、帳簿が分かれていることから生まれる、見えない時計の表れでした。
営業時間の正体は、お金の性質ではありませんでした。人が帳簿を突き合わせていた時代から受け継がれてきた、照合の段取りの性質でした。
そして、2009年に動き始めたBitcoinは、最初から全員が同じ一冊の帳簿を持つ形を取ることで、突き合わせそのものをなくしました。営業時間のない決済は、その設計から自然に生まれたものです。
今回のフォーラムで、中央銀行のお金の置き場所や、国債の支払いまでが検討の机に載ったことは、この設計の考え方が、国の金融の土台にまで届き始めたことを示しています。それは、銀行を置き換えるという話ではありません。銀行の帳簿の作り方そのものを、見直し始めたという話です。
ここに、この記事でいちばんお伝えしたいことがあります。
止まらない決済は、ただ便利になるという話ではありません。介護の急な立て替え、小さな会社の週末、災害のときの給付、そしてAIが代わりに払う未来。お金が必要なときに届くかどうかは、暮らしの安心そのものです。
同時に、止まらない仕組みは、取り消せない仕組みでもあります。だからこそ、送る前に確かめる力と、仕組みを見きわめる力が、これまで以上に一人ひとりに求められます。
当協会は、その力を身につける最初の一歩として、Bitcoinの設計を学ぶことをおすすめしています。値動きを追うためではなく、新しいお金の帳簿が、誰のために、どう作られているのかを知るためです。
町内会長の家の灯りが消えたあとも、帳簿の一行は書き足されていきます。
この記事について
- 執筆者:山下健一(一般社団法人日本クリプトコイン協会 代表理事)
- 公開日:2026年10月7日
- 最終更新日:2026年10月7日
- 参考資料:金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回(2026年9月30日開催)資料2「金融庁説明資料」/日本銀行「日銀ネットとは何ですか?」(日銀ネットの稼働時間を2016年2月に21時まで拡大)/IMF Note「How Agentic AI Will Reshape Payments」(2026年4月)/野村総合研究所 木内登英「全銀システムの24時間化(モアタイムシステム)」(2018年10月9日)
- 位置づけ:本記事は当協会の公式見解です。
暗号通貨技能検定とは
こんな想いの方々が受講されています
- 暗号通貨やブロックチェーンについて、知識の有無にかかわらず興味関心がある。
- 同一労働・同一賃金が施行された中、資格を得て他者との収入に違いを出したい。
- 自社のビジネスにブロックチェーン技術がどの様に導入できるのかを知りたい。
- SDGsの目標達成に対し、ブロックチェーン技術がどの様に関係していくのかを知りたい。
- 暗号通貨に関する情報を、仕組みや構造から自分で読み解く力を身につけたい。
- 暗号通貨の始め方や取り扱いを覚えたいが、書店に並んでいる本やYoutubeを見ても理解が進まない。
- 講師としての資格を取得し、より多くの方々へ暗号通貨の思想やブロックチェーン技術の概念を伝えたい。
投稿者プロフィール
- 代表理事
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暗号通貨の思想とブロックチェーンの概念は、金融システムをより安全に低コストで運用できるだけでなく、銀行口座を持たない20億人の生活環境を底上げします。また、寄附や募金へ広く活用されることは、SDGsの達成にも貢献する事でしょう。一人でも多くの方と共に、正しい暗号通貨システムの可能性を学び、実生活や仕事にも取り入れて頂けるよう、当協会はこれからも「暗号通貨技能検定講座」の開催を重ねて参ります。
【資格・受賞歴】
・日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー
・東久邇宮記念賞受賞
・東久邇宮文化褒賞受賞
・特許:特開2016-081134号
・特願:2018-028585
