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量子コンピュータ VS ビットコイン の行方

近年、量子コンピュータの進化が目覚ましく、「ビットコインは量子コンピュータにハッキングされて終わるのでは?」と心配する声を聞くようになりましたが、これは一部正しく、一部は誤解でもあります。

 

量子コンピュータは現在のコンピュータと異なるアルゴリズム(代表的なものにShorのアルゴリズム)を使って、従来であれば不可能に近い時間で暗号を解読できる可能性があります。

 

Bitcoinでは、従来の取引でECDSA、TaprootではSchnorr署名が使われています。どちらも楕円曲線暗号を基盤としているため、将来的に公開鍵から秘密鍵を導き出される可能性が理論上あります。

 

ただし、それが「すぐに起きる」「すべてのビットコインが危険」という話ではない点を理解する必要があります。

この記事で学べる3つのこと

  • 量子コンピュータはBitcoinの何を脅かすのか
  • 公開鍵から秘密鍵を導き出されると何が起きるのか
  • Bitcoinは量子時代に向けて、どのような対策と移行が必要なのか

もし、暗号通貨やブロックチェーンに興味関心がある方であれば、この記事は、それらの本質を捉え実生活やビジネスにも落とし込める可能性があることに気づけるでしょう。

この記事をオススメする方

  • 暗号通貨に興味関心がある方
  • 暗号通貨の活用方法を知りたい方
  • ブロックチェーン技術に興味関心がある方
  • ブロックチェーンのメリットとデメリットを知りたい方
  •  ブロックチェーンで何ができるのかを知りたい方
  •  ブロックチェーンをビジネスや実生活に活かすヒントを得たい方

一つでも当てはまる方は、本記事をじっくりと読み進めて下さい。

 

本記事を読み終えた後には、「こういう発想が必要なのか!」や「こんなことが可能だったとは!」と新たな考え方が得られることと思います。

 

それでは、本文へとお進みください。

目次

量子コンピュータをノードに使えばBitcoinを守れるのか?

量子コンピュータがBitcoinへ与える影響は、すべて同じではありません。

 

大きく分けると、Bitcoinで使われている「署名」への影響と、「ハッシュ計算」への影響があります。

 

署名への影響として知られているのが、Shorのアルゴリズムです。

 

Bitcoinでは、従来の取引でECDSA、TaprootではSchnorr署名が使われています。どちらも楕円曲線暗号を基盤としているため、将来、十分な規模と精度を備えた量子コンピュータが実現すれば、公開鍵から秘密鍵を導き出される可能性があります。

 

この場合に懸念されるのは、ブロックチェーンの記録が突然すべて書き換えられることではありません。

 

他人の秘密鍵を導き出した攻撃者が、所有者になりすまして有効な署名を作り、Bitcoinを移動させる可能性です。

 

一方、Bitcoinのマイニングで使われるSHA-256などのハッシュ関数に関係するのが、Groverのアルゴリズムです。

 

Groverのアルゴリズムは、ハッシュ関数を一瞬で無効化するものではありません。探索に必要な計算量を理論上減らせる可能性があるものです。

 

そのため、署名への量子攻撃と、マイニングへの量子技術の影響は、分けて考える必要があります。

 

量子コンピュータの脅威を正しく理解するためには、まず「Bitcoinのどの部分が影響を受けるのか」を整理することが重要です。

ビットコインネットワークのノードは量子コンピュータになれるのか?

この視点は、非常に興味深く、かつポジティブな可能性を秘めています。

 

ノードとは、ビットコインの取引を検証・記録し、ネットワークを維持するコンピュータのこと。

 

量子コンピュータへの対抗策として重要なのは、Bitcoinのノードそのものを量子コンピュータに置き換えることではありません。

 

本質的に必要なのは、量子コンピュータでも秘密鍵を導き出しにくい、新しい署名方式や出力方式へ移行することです。

 

そして、その新しいルールを世界中のノードが独立して検証する。

 

ここに、Bitcoinらしい量子時代への備え方があります。

 

量子時代のBitcoinを守るのは、攻撃者と同じ量子コンピュータをノード側も所有することではありません。

 

量子コンピュータでも偽造が困難な署名方式を採用し、その新しいルールを、世界中の通常のノードが自ら検証できる状態を維持することです。

 

重要なのは計算装置の性能競争ではなく、誰もが独立して検証できる仕組みを守りながら、安全な暗号方式へ移行することなのです。

Bitcoinを量子攻撃から守るために必要な3つの視点とは?

① 量子耐性署名へ移行する

量子コンピュータによる攻撃を防ぐためには、将来的に量子耐性暗号(Lattice暗号など)に切り替える必要があります。

 

量子耐性暗号を導入するために、ノードそのものを量子コンピュータにする必要はありません。

 

現在研究されている量子耐性署名の多くは、通常のコンピュータでも生成・検証できます。

 

課題になるのは計算能力そのものよりも、署名データの大きさ、ブロックスペースへの影響、既存ウォレットとの互換性、そして世界中の利用者が安全に移行できる仕組みをどう設計するかです。

 

量子耐性署名の導入で重要になるのは、特殊な量子コンピュータを用意することではありません。

 

署名や公開鍵のサイズ、検証コスト、ブロックスペースへの影響を抑えながら、一般的なコンピュータでも誰もが検証できる設計を実現することです。

 


② ノードの処理速度ではなく検証ルールを更新する

量子攻撃によって作られた署名が、現在の暗号ルール上で正しい署名として成立してしまえば、ノードはそれを単純な「不正取引」として見抜くことができません。

 

だからこそ必要なのは、ノードの処理速度を上げることではなく、量子コンピュータでも偽造が困難な署名方式へ、Bitcoinの検証ルールを移行することです。

 

守るべきものは計算速度ではなく、所有権を証明するルールなのです。

 


③ 世界中の利用者が安全に移行できる仕組みを設計する

量子コンピュータによって最初に懸念されるのは、Bitcoinのブロックチェーン全体が突然書き換えられることではありません。

 

より現実的に議論されているのは、公開鍵から秘密鍵を導き出され、所有者になりすました署名によってBitcoinを移動される可能性です。

 

つまり、問題の中心は「記録の改ざん」よりも、「所有権を証明する署名の安全性」にあります。

 

ビットコインは未来に向けて進化していきます。スケーラビリティ問題(処理能力の限界)や新しいユースケースへの対応など、さまざまなアップデートが必要です。

 

Bitcoinのアップグレードで最も難しいのは、計算能力を増やすことではありません。

 

世界中で動く多数のノード、ウォレット、取引所、マイナーが、同じルールのもとで安全に移行できるようにすることです。

 

量子時代への対応でも、技術的に優れた暗号を選ぶだけでは不十分です。誰が、いつ、どのように資金を移し、古い方式をどこまで認めるのかという、社会的な合意形成が必要になります。

 

Bitcoinのアップグレードが難しいのは、ノードの性能が低いからではありません。

 

世界中の利用者、ノード運用者、ウォレット開発者、取引所、マイナーが、互換性を保ちながら同じルールへ移行する必要があるからです。

 

Bitcoinの強さは、何でも素早く変更できることではありません。

 

必要な変更を慎重に検証し、誰か一人の判断ではなく、広範な合意を経て導入していくことにあります。

「今すぐに危険」は誤解なの?

現時点では、量子コンピュータがビットコインに実害を与えるレベルには達していません

 

たしかに、Googleが2019年に発表した量子プロセッサ「Sycamore」や、2024年12月に発表した量子チップ「Willow」など、量子技術は着実に進歩しています。

 

Willowが示した重要な成果は、単に量子ビットの数が増えたことや、あらゆる計算が高速になったことではありません。

 

量子コンピュータは、量子ビットを増やすほど計算中の誤りも増えやすいという大きな課題を抱えています。

 

Willowでは、量子誤り訂正の規模を拡大することで、論理的なエラー率を低下させられる可能性が示されました。

 

これは、将来的に大規模で安定した量子コンピュータを実現するための重要な前進です。

 

ただし、WillowがBitcoinの秘密鍵を解読できるという意味ではありません。

 

現在の量子コンピュータと、Bitcoinで使われる楕円曲線暗号を現実的な時間内に破れる量子コンピュータとの間には、依然として大きな技術的隔たりがあります。

 

重要なのは、「今すぐ破られる」と過剰に恐れることでも、「まだ先の話だから何もしなくてよい」と無視することでもありません。

 

量子コンピュータの進歩を観察しながら、暗号方式と資金移行の準備を先に始めておくことです。

 

Bitcoinで現在使われているECDSAやSchnorr署名の安全性を現実的に破るには、膨大な数の高品質な量子ビットと、長時間安定して計算できる誤り訂正量子コンピュータが必要です。

コミュニティはすでに対策を視野に入れているの?

世界中のビットコイン開発者たちは、量子コンピュータが実用化される「その日」のために、すでに量子耐性の暗号アルゴリズムの導入を議論しています。

 

Bitcoinにおける具体的な議論の一つが、BIP 360で提案されている「Pay-to-Merkle-Root(P2MR)」です。

 

現在のTaprootには、公開鍵を基礎としてBitcoinを使用する「キーパス」と、あらかじめ設定されたスクリプト条件によって使用する「スクリプトパス」があります。

 

BIP 360が提案するP2MRは、量子攻撃の対象となり得るキーパスを取り除き、スクリプトパスを中心とした出力方式を設けようとするものです。

 

これにより、将来的に量子耐性を備えた署名方式をBitcoinへ導入しやすくすることが検討されています。

 

ただし、P2MRそのものが量子耐性署名を提供するわけではありません。

 

量子攻撃に弱いキーパスを持たない出力形式を用意することで、長時間にわたって公開鍵が露出するリスクを抑え、将来、量子耐性署名がBitcoinへ導入された場合にも利用しやすい基盤を整える提案です。

 

Bitcoinを送金する際に公開鍵が初めて明らかになる形式では、取引が承認されるまでの短い時間に秘密鍵を導出される「短時間露出攻撃」も考える必要があります。

 

そのため、最終的には出力方式だけでなく、署名方式そのものを量子耐性のある方式へ移行する必要があります。

 

また、BIP 360は議論中の提案であり、現時点でBitcoinネットワークに導入済みの機能ではありません。

 

それでも、Bitcoinにおける量子対策が、単なる空想ではなく具体的な設計の議論へ進み始めていることを示す重要な提案です。

量子対策で最も難しいのは「暗号」ではなく「移行」

仮に、量子コンピュータでも破ることが難しい新しい署名方式が完成したとしても、それだけでBitcoinの量子対策が完了するわけではありません。

 

新しい方式が導入された後、世界中の利用者が、古い暗号方式で管理されているBitcoinを新しい量子耐性アドレスへ移動する必要があるからです。

 

個人のウォレットだけではありません。

 

取引所、カストディ事業者、企業、ETFなどの運用主体、決済事業者も、ウォレットや管理システムを更新しなければなりません。

 

さらに、長期間動いていないBitcoinをどう扱うのかという問題もあります。

 

  • 所有者が長期保有しているだけなのか。
  • 秘密鍵を紛失して動かせないのか。
  • すでに所有者が亡くなっているのか。

 

外部から見ただけでは、その違いを判断できません。

 

量子攻撃が現実的になったとき、古い暗号方式のBitcoinをそのまま使用可能にしておけば、攻撃者に奪われる可能性があります。

 

一方で、ネットワーク側が一方的に使用不能にすれば、正当な所有者が持つBitcoinまで動かせなくなる可能性があります。

 

  • 攻撃者に奪われる前に古いコインを凍結するのか。
  • 最後まで所有者が移動できる権利を残すのか。

 

これは技術だけでは決められません。

 

  • Bitcoinにおける所有権とは何か。
  • 失われた可能性があるコインを、ネットワークがどこまで扱ってよいのか。
  • 誰が移行期限を決めるのか。

 

量子対策は、暗号技術の問題であると同時に、分散性、所有権、不変性、合意形成を問う問題でもあります。

 

Bitcoinの未来を守るうえで最も難しいのは、新しい暗号を発明することではなく、中央管理者が存在しないネットワーク全体で、安全な移行に合意することなのです。

安心のために私たちができることとは?

  • 「量子耐性ウォレット」の登場に備えて情報を収集しておく

  • 正しい知識を持ち、過剰に不安を煽る情報に惑わされない

  • 同じ受取アドレスを繰り返し使用せず、公開鍵を不必要に長期間露出させない

 

将来的に量子耐性のある出力方式やウォレットが導入された場合、適切な時期に資金を移動できるよう、公式な開発動向を確認しておくことが重要です。

 

ただし、「未使用のアドレスならすべて量子攻撃に強い」という意味ではありません。アドレス形式によって公開鍵の見え方が異なり、Taproot出力のように、使用前から量子攻撃の検討対象になる方式もあります。

 

ビットコインの未来は、まるで登山のようなもの。急な天候の変化(=技術的リスク)があっても、しっかり装備を整え、ルートを把握していれば、安全に頂上を目指すことができます。

まとめ:量子は敵ではなく、味方にもなり得る

量子コンピュータは、Bitcoinの終わりを直ちに意味するものではありません。

 

一方で、既存の署名方式が永遠に安全であることを保証するものでもありません。

 

量子技術の進歩は、Bitcoinに新しい暗号方式と、安全な移行方法を考える必要性を突きつけています。

 

脅威を正しく理解することは、未来を悲観することではありません。

 

危機が現実になる前に、誰もが検証できる仕組みを守りながら備えることです。

最後に

「量子コンピュータがビットコインを壊すかもしれない」──


そんな不安の声は、技術が進化する今だからこそ出てくる自然な感情です。

 

けれど、その技術進化は「恐れるべき敵」ではなく、「正しく向き合えば力になる味方」でもあります。量子コンピュータは、たしかに強力な技術です。しかし、それに備える術も、もうすでに始まっています。

 

量子時代への備えとして必要なのは、ノードを量子コンピュータに置き換えることではありません。

 

量子攻撃に耐え得る新しい署名方式を設計し、そのルールを世界中のノードが独立して検証できる状態を維持することです。

 

Bitcoinの強さは、何でも柔軟に変更できることではありません。

 

中央の管理者が一方的にルールを変えるのではなく、必要な変更を慎重に検証し、時間をかけて合意しながら取り入れていくことにあります。

 

それは技術の進化であると同時に、分散性という思想を守るための進化でもあります。

 

これからの時代を生きる私たちにとって大切なのは、


「未来を恐れて閉じる」ことではなく、
「未来を知って備える」ことではないでしょうか。

本質的な学びが、あなたの未来を切り開きます。

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投稿者プロフィール

山下健一代表理事
暗号通貨の思想とブロックチェーンの概念は、金融システムをより安全に低コストで運用できるだけでなく、銀行口座を持たない20億人の生活環境を底上げします。また、寄附や募金へ広く活用されることは、SDGsの達成にも貢献する事でしょう。一人でも多くの方と共に、正しい暗号通貨システムの可能性を学び、実生活や仕事にも取り入れて頂けるよう、当協会はこれからも「暗号通貨技能検定講座」の開催を重ねて参ります。

【資格・受賞歴】
・日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー
・東久邇宮記念賞受賞
・東久邇宮文化褒賞受賞
・特許:特開2016-081134号
・特願:2018-028585
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